応募書類の受付は4月26日13時に締め切りました。
書類の受諾状況は、5月中旬頃に応募者登録サイトに表示されます。
"Application forms were closed at 13:00 on 26 April.
The acceptance status of documents will be displayed on the registration website around mid-May."
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(司会) それでは坂本さんへの質問なんですが、先日ブータンのことがテレビで放送されていました。海外の医療チームが入って、これまでは助産師さんが取り上げていたところを、トラブルがあった場合に母子の命が危険であるので、最近は病院での出産を勧めるようにしている。でも、もしかするとそれがブータンの文化的なものの破壊へとつながるのではないかという危惧を感じました。日本でも病院での出産が一般化していますが、その反面、「家」への愛着が薄くなっているのではないかと思います。 ブータンでも同じようなことが起こってしまうんじゃないでしょうか?
ブータン、車道から歩いて6 時間かかるサクテンという村
(坂本) 僕もブータンが大好きでこの研究をしています。独りよがりの善意でこれを勧めて、手をつけてはいけないブータンの良さを破壊してしまうという心配はしています。でも病院と家での出産では安全性が全然違うし、場合によってはそれで死んじゃうわけです。それは日本もブータンも同じで、そのリスクを考えるとブータン人自身も病院を望みますね。情報を渡すけど、強制するわけではないんで。病院の方が安全ですよ、という情報を渡して、ブータン人がそれを選んでいます。
(司会) 日本でも家で出産したいという人もいますが、それに対するサポートはあるんでしょうか? ブータンでも伝統的な出産を残しつつ、それに対するサポートも受けられればと思うんですけど。
(坂本) ブータンの村は山奥にあるんですよ。この前僕が行ってた村だと道路があるところまで 9 時間かかるわけです。もし赤ちゃんが合併症を持ってたら、医療スタッフがたどり着く前に死んじゃう。ヘリコプターで待機させたりというのは今のブータンでは現実的ではないので、あらかじめ病院の方を薦めるべきだと僕は思いますね。僕も赤ちゃんが死んでしまうという現場に立ち会ったことがありますので。京都だと何かあったら 7 分くらいで救急車も来てくれますが、ブータンだとそうはいかないわけですよ。でも、そこで子どもの運命を選択するのは親なので、それはもう、家が良いと言ったらそれに従うしかない。僕らにできるのはとことん自分の意見を説明して、村の長老も呼んできて話し合って、彼らの決断を待たないといけないということです。
(司会) 坂本さんは今はブータンですけど、その後どこか他の土地というのは考えていますか?
(坂本) やっぱり日本ですね。
(司会) ブータンで学んだことを、日本に活かせる可能性はあるんでしょうか?
(坂本) あると思いますね。やっぱりブータンはほんと予算がないですよね。でもやるとしたら 100%やろうとするんですよ。日本でたとえば、検診が有効です、ていって、やっても来ないじゃないですか、全然。ブータンは、政府がやろう、有効だ、って言ったらけっこうすごい参加してくれるんですよ。そういう部分について日本はまだまだしっかり学ぶ必要がある。 先端医療も大事なんだけど、そういう基本的な、いまある知識で有効なことをしっかりやるのが重要なんじゃないかと思う。
(後藤) 僕はがん検診の研究していたことがあって、日本って住民検診の受診率低いといわれてるじゃないですか。でも、きっちり計れていないからっていう可能性がある。がん検診の受診率は二つデータがあって、市町村の検診の受診率、これ低いんですよ。 もう一つは、国民生活基礎調査というサンプル調査で聞いてる。けっこう数値が違うんです。日本では公共の検診もあるし、人間ドックみたいな自分で行く検診もある。さらには企業がやってる検診もある。いろんな選択肢をどれぐらい受けてるかのデータって皆無なんですよ。一方で韓国などでは、保険者が一元化されて統一的に行われている。
(楯谷) 一元化ってやっぱ難しいんですよね。
(後藤) 韓国では、もともと健康保険は公団としてやってたんですよ。これ役所じゃないんですよ。日本では、 国民健康保険は役所がやってる。一方、企業の健康保険は組合っていう、 公団に似た役所じゃないところがやってる。役所じゃないところが固まるのはけっこう楽なんだけど、役所と役所じゃないところが固まるのはかなり難しいと言われています。さらに、 もともと韓国は 200 ぐらいだったんだけど、日本は何千とある。
(坂本) なんか日本の医療システム、 複雑ですよね。それはそれで良さがあると思うんですけどシンプルにできるところはもっとシンプルに……。
(楯谷) 保険料の決まり方もよくわからないですよね。けっこう、国民健康保険高かったなあと思うんやけど。
(後藤) あれも法律できっちり決まってるんでね。
(楯谷) あれは一元化したらダメなんかな。
(後藤) それは時間がかかるでしょうが、将来的には一元化すればいいと思います。