応募書類の受付は4月26日13時に締め切りました。
書類の受諾状況は、5月中旬頃に応募者登録サイトに表示されます。
"Application forms were closed at 13:00 on 26 April.
The acceptance status of documents will be displayed on the registration website around mid-May."
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(鈴木) 人間のカテゴリーは動物にはそのまま当てはまらないんですよね。オナガザルの仲間ではそういうカテゴリー化の研究がされていて、若い時は空を飛んでいる猛禽類に対しても他の鳥に対しても全部同じ警戒行動を取って、区別ができない。親と長い間一緒にいることで、カテゴリー化が洗練されてくる。生き物がものをどうカテゴリー化するのかは、進化の歴史の中でその必要があるかないかということと対応してるんじゃないかと思うんです。
(田中) カテゴリー化というのは、外界にある全ての刺激を区分けして、ちょっとずつ集合を作って分節化していく作業ですね。本来なら全部違うものと認識してもいいものを、なぜ分けるのか、どういう法則や原理に従って発生してくるのか。昔からいろいろな学問で研究されてきたテーマで、今の話はカテゴリー化が自然的なのか文化的に構築されるのか、何のためにカテゴリーが出てくるのかということにつながっていると思います。その中で記憶にも話を広げていきたいと思うんですけれども、平野さんのご研究はこの辺の話とどう関わってくるんでしょうか。
(平野) 僕は鈴木さんの話と違って、脳の動作環境として何か入力があった時に新たな行動を引き出すことができる、そこで何が起きているのか、入力に対するある特定の行動の出力を観察することで記憶を評価する、という研究をやっています。記憶の根本は神経の強弱の切り替えなんです。ある神経入力が回路に入ってきてそれに対する可塑的変化があって新たなことができる。そういう時に何が起きているのかを、ある行動系で評価しているということです。一方カテゴリーの話でいうと、カテゴリーをなぜ作ることができるのかは、神経科学ではコンセンサスが得られていて、要は「一般化」なんです。ある事象全てをそのまま記憶すると一般化できずカテゴリー化はできない。一番良い例として、写実的な記憶ができる人は、何万桁かの円周率を3 秒間見せるだけで全部言えるんです。
(天野) すごいですね、それ。
(平野) ハトと同じような記憶システムなんですが、この場合人が覚えられないんですよ。人は気分によって顔が変わるし、髪型も変わる、それが一般化できない。特徴を捉えてカテゴリー化することができない。概念を通してカテゴリー化を作っている人間特有のものだと思います。
(天野) よくいわれるように、色についての言葉が少ない民族と、色の名前の多い日本人は認知の違いがあるんでしょうか。
(平野) 文化的にいろんな色を使って文化物を作ってくればある程度の言葉はできてくると思うんですが、文化背景だと思います。
(田中) その場合には認知と、認知によって得られる感覚の細分化は……。
(平野) ちゃんと分けたほうがいいと思うんですけれども、例えばリンゴを見ても赤い丸いものと思うのが知覚で、それをリンゴと認めるのが認知です。色に関しては人間は言葉があるから、言葉に当てはめてそれを認知するところがありますね。
(天野) 言葉が認知や思考力をリードしているところはあるんですかね。
(平野) それはあると思います。人間の特徴は個体を超えて進歩することができることで、普通の動物は一から学習しなければならないけど、人間は書物に残して、教えて聞かせることができる。スタートが違うんですよ。人間は蓄積して進歩できるんですよね。そのツールとして言葉があると思います。
(鈴木) 他の動物でも子どもと親の世代が重なっているような動物、例えば猿や鳥では、行動や言葉の性質が世代を超えて文化的に継承されることも報告されています。アメリカコガラというシジュウカラの仲間は、オス同士が言い争いをするんです。複雑なフレーズをお互いに鳴くんですが、その時に使ってるフレーズがまさに文化的に世代を超えて徐々に流行語みたいに進歩しているんです。
(一同) すごい(笑)。
(田中) しかも喧嘩の中でというのが面白いですね。喧嘩の中の言葉に流行がある。人間の「やばい」や「かわいい」みたいに、本質的にはどちらでもいいような言葉が流行るのと同じ、無意味なところに流行りが生まれるみたいな。
(鈴木) さっきの話に戻りますが、いろんな色を指し示す言葉が多い民族ほど色を識別する能力が高いっていうことですか?
(天野) いや、言語があるからこそ感性が育つというのは?日本語で主語が曖昧なことが、自己意識の薄さと結びつくんじゃないか、とか言われますが?
(平野) 言語が感性を発展させるというのは、確かにそうだと思います。
(鈴木) それって多分逆も考えられて、感性が発達したからそれに対応した言語が進化すると。