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(宮﨑) まさに工業とかそうだと思うんですけど、何か目的があって技術開発するとなると、必ず最適化という問題になりますよね?
(小川) 私の専門のエネルギー関連でもまさにそうですね。こっちのやってる最適化は、ものすごくわかりやすい。まさに現代の人間がやってることなので、何か意味はあんまり広がりようがない気もするんですけど。
(一同) (笑)
(小川) 重要なのはコストだけだったりするんですね。こっちの場合、別に太陽から降り注ぐエネルギー自体は無尽蔵にあるから、とにかく安くやることのほうが大事でして、目的関数はコストになってます。例えば、私は燃料電池も研究してるんですけど、一般的に使われる燃料電池だったら、今言ったようにコストが大事だったりするんです。でも一方で、宇宙開発で使う燃料電池だったら、逆にコストはどっちでもいい。それよりコンパクトなことのほうが大事とかっていうふうになって、極限状態になる場合、つまり宇宙環境だとか、または深海だとか、そういうふうになった場合は、コストは重要ではないです。それ以外は結局コストが最適化の対象ですね。
(菊谷) だから今おっしゃった宇宙開発の場合ミニマムにするっていう、質量ミニマムにするってのは、打ち上げのコストと関係するわけなんですか?
(小川) 結局そうですね(笑)。
(一同) (笑)
(宮﨑) トータルのコストを…。
(小川) スペースを小さくするとか。
(司会) 色々と最適化したいことがあると、どこに重きを置くのかが難しそうですね。
(宮﨑) 重みづけ、すごく難しい問題ですよね。多分数学的に考える必要があると思いますが。
(菊谷) そうですね。
(佐藤) 重みづけは難しいですね。
(菊谷) 重みづけって、英語で何ていうんですか。
(佐藤) Weighting です。
(菊谷) 何かプライオリティみたいなもんなんですか?優先順位の。
(佐藤) そうですね。実は、多目的最適化だと、例えば先ほどのリターンとリスクでもいいんですけれども、何かいろんな解の候補があったときに、重みづけをする代わりに、戦略の候補として残しておきたいものの集合―目的が2つなら曲線のようになりますが―を見つけてやるという方法があります。あとはこれを人間が見てどの解だったら今持っている問題、現実問題に即したものになってるかっていうのを選べる。
(小川) それで言うと、技術開発って多分、この戦略の曲線を全体的にもっと良いものにすることだと。
(佐藤) そうですね。
(司会) 小川先生のご研究である、アンモニアの生成に関する技術開発についてはいかがでしょうか?
(小川) ブレイクスルーが100年間起こってないからなかなか大変ですね。今やってるのは、装置を小型化しようとかだったりします。今、アンモニアの合成に関しては、経済性を持たせるためには大型で一気に多量に作ることしかできないです。そうするとインフラとか整備されてない場所に行き届かないので、装置の小型化によりちょっとしたプラントとかでも作れるようになったら、そういうとこにも行き届くわけです。
(佐藤) 数理最適化だったら、問題を設定したうえで、それを効率的に解こうとみんな研究してるわけなんですけど、今のお話を聞いてると、その制約条件を緩めるようなほかの技術を開発したり、目的関数の形が少し変わるように何かほかの技術を援用したり、そういう問題自体を変えるようなプロセスを含むものがより広い最適化なのかなという気がしました。