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(司会) 今日のテーマは最適化ということですが、最適化について皆さんの研究と絡めてお話ししていただければと思います。
(菊谷) 最初に最適化という言葉って一体何だろうって思って、英語だとOptimizationですよね。Optimizeという動詞からつくられた名詞ってことなんですが、もともとはOptimismと同じくラテン語の「最善」Optimusに由来するとも言われていて、わたしも専門外で詳しくないですけど語源についてはちょっと気になりますね。
(小川) それは面白いですね。最適化って、基本的には何かリソースが限られてる必要がありますよね。例えばわれわれの月給が限られてるからこそ、節約という最適化をするわけですけど。
一同 (笑)
(小川) なので、限られてるから最適化が必要っていうことが最適化の語源に関係している気がしますがどうでしょうかね?
(菊谷) いや、ちょっと私も連想なので、ちゃんと調べてみる必要があると思うんですけれど。もともと私が訊きたかったのは、数学や他の分野で言う「最適化」の定義ってどっから始まったのかなっていう。
(小川) どっから始まったか、というと?
(菊谷) 誰が呼び始めたのかなっていうのが気になって。
(佐藤) 確かに。私が研究しているのは数理最適化というもので、一般的な最適化という言葉とは区別する必要があるかもしれないんですけれど、その数理最適化では、今ちょうど小川さんがおっしゃったように、何か最小にしたいもの、―たとえばコスト―であったり、あるいは最大にしたいもの―たとえば利益―であったりというものを考え、これを目的関数と呼びます。限られたリソースの下で―それを制約条件と我々は呼んでいるんですけれども―制約条件を満たすように、目的関数を最大化する解を見つけたいという問題を数理的に定式化して、それを理論的に解析したりコンピュータを用いて解くということをやってます。
(菊谷) その数理最適化の定義っていうのが、広く一般に戦略とか、さっき小川さんのおっしゃられた話みたいなものの最適化に広がっていったのか、もともと何か漠然とした最適化の概念があって、数理最適化ではそういうふうに新しく定義づけられたっていうのか、順番的にどうなのかなっていうのが少し気になって。
(佐藤) なるほど。数理最適化の発生としては、後者のほうだと思いますね。何か漠然とよりよいものを目指したいというのがあって、それを数学的に解決する理論体系として、数理最適化ができたと。
(小川) 理屈がついていくと、それに対して的確な行動とかが生まれるんであって、ランダムにやってる時点では的確なこととか起こんないですよね。だからロジカルであることが、かなり最適化にはつながることだったりはしないですかね。
(宮﨑) 多分、目的がはっきりしてないといけないですよね。明確じゃないと。
(佐藤) そうですね。みんなで何かあるゴールに向かって、ベストを目指そうということで最適化をしていっても、一人一人が考えるベストがちょっとずつずれていると、みんな違うところを目指していってしまうので…目的をしっかり持つことが大事だと思います。
(宮﨑) 客観的に捉えられて、全員が共有できないといけないですよね。
(佐藤) そう思います。ただ、目的を決めたうえで、その達成を目指していく最中でも、実はやっぱり最初に定めた設定は少し現実の状況からずれているとなったら、何が最適かっていうことをちょっと捉え直して修正していくというのは重要ではあると思うんですけれども。私は特に数理最適化を意識しているからそういう言い方になるのかもしれませんが。
(宮﨑) でも僕の感覚はそれしか持ってないんですよ。何かさっきのお金の話でも、例えばいかに最短距離で時間を短く、いろんな場所を回れるルートをどうやって決めるかっていう問題とかあると思うんですけど(注1)、それも時間っていう評価軸で、定量的な値で評価できるから、最適化っていうのはできると思うんですよね。だから物理でエネルギーを最小にするとか、何かの表面積を最小にするとか、結局は数字や数式で表せることについてのみ、最適化っていうのは定義できるんじゃないかなあと思ったんですけど、もっと広義な意味の最適化ってどうなのかな?(笑)