| ENGLISH |
(司会) それで皆さん、それぞれのご専門の研究をされていると思うんですけれども、自分の研究を一般の人に理解してもらうにはどうしたらいいと思われますか。
(花田) 役に立つところを理解してもらいたいのか、“楽しいね”って言ってもらうだけでいいのか。
(江間) 花田さんの研究って“役に立ちますか”とほかの分野の人から聞かれることあるんですか。
(花田) 素粒子論とかやっていると、それはもう聞いてはいけないことなんです。
(一同) (笑)
(花田) でも聞かれたときにね、最近この関係分野の人がよく言ってるのは、 アインシュタインの一般相対論が役に立ったことです。それはどこかというと、GPS の精度です。これはアインシュタインの理論をちゃんと取り入れないと使い物にならないんです。だけど、 アインシュタインは別に GPS のためにやっていたわけではないです。結果として役に立ってるんです。
(藤井) でも、花田さんたちの分野は、 ノーベル賞を取ったりするじゃないですか。国民にとって学問が役に立ってるっていうのは、具体的に役に立たなくても、ノーベル賞取ったことで十分役に立ってるみたいな、日本人のすごさを示したとか、日本の研究機関のすごさを示したっていうのが役に立つ一つの指針になり得るじゃないですか。 人文系には基本的に、そういうのはないから、具体的なレベルでの「役に立ってますか問題」っていうのが常につきまとうけれども、基礎科学の人たちは、 それとは別の次元での勝負が可能なのかなという気がします。その点はどうなんですかね。
(花田) 賞を取れる見込みもないから言うけど、賞を取るためにやってるわけじゃないですね。
(江間) かっこいい(笑)。
(細) 役に立つというときに、実利的な面であったり、誉れの部分であったり、 個々人のしあわせに関係していたりとか。僕はこの三つが重要かなと思っています。
(藤井) その三つ目は具体的にどういうことなんですか。
(細) 古代の死生観がわかって、ちょっと人生が豊かになったみたいなことです。
(藤井) それは実利的に役に立ってるのとは、またちょっと違う扱いになるんですよね。
(細) ええ。文系のかたは前の二つがなかなかなさそうで、役に立つかどうか聞かれたときはこの三つ目が武器になるのかなあ。
(藤井) 文系でも一つ目のカテゴリーにも当てはまるものがあると思いますね。 例えば今、宗教と表現の自由の問題、移民政策とイスラモフォビアの問題、日本に住んでいるわれわれにとっても身近になっているじゃないですか。こういう問題をある程度客観的に、歴史的なものを踏まえて勉強している人が例えば大学にいて、その人がこういった問題を研究し直して発信することは、人文学だからこそできるのだと思います。そういう意味では、一番目のカテゴリーにも当てはまるのかなと思います。
(細) そうだと思いますね。