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(司) 隣接分野でもほとんど会話が成立しないという領域もありますが、数学では共有している知識体系がかなりあるように思えるのですが。
(千) 研究自体は非常に細分化されていますが、ある段階まではみんな同じような内容を一通り学ぶので、お互いに話していてまったく通じないということはあまりないかもしれませんね。ただ、専門外の人にはある程度分かりやすいように話すようにしてはいますから、そのあたりは別の分野でも同じかもしれません。
(岸) 私のやっている解析と千田さんのやっている代数では手法などもかなり違っていますし、専門的なところはやはり理解するのは大変ですね。分野ごとの違いといえば、記号や数式にもそれぞれの分野の特徴が現れているようなところもあって面白いと思います。たとえば、解析の論文では不等号が多いけど、 代数の論文には等号が多いという印象があります。
(司) 分野によって研究者の雰囲気とかも違ったりするのでしょうか。
(千) 印象論ですが、整数論などは数学オリンピックとかで有名な人が多いっていう感じはします。
(岸) 解析は、大学入学後も数学を専門にすることを決めずに悩んで最終的にきましたっていう感じの人がわりといるイメージがあります。解析は高校では習わない内容が多いので、高校の時から興味をもつというよりも、 大学に入って勉強しているうちに面白くなってくるという感じなのかなと。
(千) 岸本さん自身はいつ頃、解析を専門にすることを決めたんですか。
(岸) 学部三回生の時に授業を一通り取ってみて、解析が一番面白かったからですかね。一番得意で成績が良かったというのもありますが、教わった先生に惹かれたっていうのもあります。大学院での指導教員で現在の受入教員ですが。
(千) その授業ではどのあたりをやったのですか。
(岸) 解析だとルベーグ積分とかです。
(千) ルベーグ積分は私もかなり好きでしたね。私は東北大で堤誉志雄先生に習ったのですが、すごい面白い授業でした。
(岸) え?私が受けたのも堤先生の授業です。 そうか、東北大から移られたのでしたね。
(司) 魅力的な先生っていうのは、ただ分かりやすい講義をするとかではないのでしょうね。
(岸) たとえば、何か質問したとき、分かりやすい具体例をいくつも出してくれるような先生はやっぱりすごい人だなと思いますね。
(千) 個性が溢れ出るというか、何か滲み出るものがあって。何言っているのか分からないので、良い教育者っていうのとは違うのかもしれませんが。