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(司会) 宇宙関係にも色んな分野があるということですが、何がきっかけで皆さんは研究分野を選ばれたのか、たとえば幼少期の経験とか中高の先生との出会いとか、何かあれば教えてください。
(長尾) ぼく、実は学部生のときには、重力波天文学を最初やりたかったんですよ。(一同) ほぉ。
(長尾) だから物理寄りですよねぇ。あんまり物理もできなかったくせに。で、卒業研究は一般相対性理論の研究室にちょっと行ったんですよ。
(小林) あっ、へぇ。そうだったんですか。
(長尾) そうすると、難しすぎて、これは無理だなぁって思って。でも周りにはもっと現象論寄りで銀河やブラックホールを研究されている方もたくさんおられて、そういう先生たちと話している中でそういう研究も面白そうかなぁって思うようになりました。ちょっとそういうところにも潜り込ませてもらって、ゼミとか混ぜてもらっているうちに、だんだんとそっちやるようになった感じですかねぇ。
(司会) そうですか。長尾さんにとっては、 物理はちょっと難しかったと・・・。
(長尾) そうですねぇ。
(司会) 逆に物理の方が簡単だと思えて物理をやっているという人もいるかも・・・。
(長尾) そうでしょうね。たぶん、物理の方で天文は難しいよって言う方が、どこを難しいと思われるかって言うと、天文のぐちゃぐちゃしてるところですね。基本原理が見えにくいっていうか、そういうところが物理の方からすると敷居が高く感じるっていうのは、 よく聞くんですよね。一方で、統一的な理論がよく分からない中で色んなものがあって、 きれいなものがあったり、ぐちゃぐちゃした形のものがあったり、という博物学的な側面を面白いという人もいて、そのへんは何を楽しいかって思うかというセンスで変わってきますねぇ。
(小林) すごく同意しますね、それは。
(信川) ぼくは、難しさで言うと、物理と天文の難しさはそんなに違わないと思いましたね。ぼくは学部では最初物理を主に勉強していて、ずっと物理やろうと思ってたんですけど、物理の何を対象にしようかというところで、宇宙を選んだ。で、宇宙は、まあ子供のときから宇宙は好きだったというのがあって。 ブラックホールはとてもインパクトが強いものでしたし・・・。
(司会) そうですよね。
(信川) ぼくは宇宙観測から宇宙でどういう現象が起きているのかということを研究しています。現在、エックス線を使った観測をしていますが、それは自分の進んだ先にそういう分野があったからなんです。実は特に分野を選んだ強い根拠はないです。
(司会) そうですか。
(信川) 理論よりは観測をやりたいなと。新しい観測装置は新しい宇宙を見せてくれると思っているので、自分で観測装置を作って宇宙を見ていきたいなぁ、というのがモチベーションの一番ですねぇ。
(村主) ぼくは、子供の頃から SF を読んだりゲームをしたり、高校生・中学生向けの本を読んだり。何と言うのかなぁ、興味はどっちかと言うと、理学全体でしたかねぇ。論理学に基づく自然数の作り方というのも勉強したし。大学へ進学するときは、悩んだこともあったんですけど、理学部に入るというのまでは決めてた。次に大学院入試の年になって、 どこに行けばいいか分からなかったんだけど、 京大に天体核研究室というのがあって、そこで宇宙物理でシミュレーションをされている先生がいらっしゃるというので、そこにしようかなぁっと決めました。
(小林) ぼくは中学・高校では、ものすごく数学が好きで、ほんとに数学ばっかりやっていた。京大の理学部入ったら 3 回生まで物理か数学かを決めなくていいので、どちらかをやろうと思って入りました。入ってからの授業も物理よりも数学の方に結構興味があったので、数学ばっかり出ていて、でもどうやっても数学の人と友達になれなくて・・・。(一同)(笑)
(長尾) どういうことや!(笑)
(小林) なんかこう、ちょっと話しかけづらいというか(笑)。しかも、ものすごくみんな頭がよくて、これはかなわんと。だから 3 回生で課題演習を選ぶときは物理にした。でもやっぱり数学が好きで、物理の中で数学っぽい分野って何だろうと思って、すぐ思いついたのは一般相対論。じゃあ一般相対論を一番使うのは何だろうと思って、それはやっぱりブラックホールや宇宙全体の研究なので、自然とそういう方向に行って。もちろん実験とかも課題演習でやらされたんですけど、色んな細かいことに気を遣うのがどうしてもだめで。 まあ数学も結構繊細なところがあると思うんですが。でも、ぼくは結構いい加減な人間なんで、たとえば、極限と積分の交換を、それをしていい条件を気にせずにやりたいんです。 そうするとぼくに馴染むのは比較的数学を使う物理の分野で、そこに行こうと思ったんですね。