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(司会) じゃあちょっと他の話題に。白眉研究者の中にはいろいろな研究分野の方がいらっしゃると思うのですが、 その中で、白眉研究者として、何か新しく見えてくるつながりとか、そういうものってありましたか。
(江波) 直接は関係ないんですけど、生物の方が多いんで、齊藤さんとか、今村さん(白眉2期)とか。やっぱり生物っていう名前がついてるけど、あれ化学だと僕は思ってて、結局、全部、たんぱく質も RNA も、元素で記述できるものじゃないですか。例えば今村さんの研究とかで生体内で何か歩いている分子がいるじゃないですか。酵素にしたって。動いてるやつとか、何で動くの、これ?化学屋からしたらとんでもない。だって作れないわけじゃないですか。僕ら元素の材料は持ってるんだけど、それを組み合わせて動く酵素を作れないっていうのが、すごいことだなって思ってるんですよね。だから生物って何だろうっていう。最近、そっちの研究に絡んでいきたいなって思ってますね。たんぱく質一つを取ってみても、ちょっと信じられないぐらい複雑で、構造や機能が複数の絶妙な相互作用でものすごい精密に決まってるんですよ、バシッと。しかもそれが水の中にあって、塩化物イオンなどが周りにあって、その状態でこういう形になったときに、こういう機能をすることができる。で、場所が変わるとそれが、折り畳んでいたのが広がって、今度はこういう動きをするとか、もう無限のように起こってるわけで、いや何か、これはちょっとすさまじいな。(一同)(笑)
(江波) だからこれ、不思議に思うよね。 だって、結局、周期表にあるものの組み合わせでしかないのに、あんなメカニスティックなことが勝手に起こって、 死なないように、各生物が勝手にやっちゃってるっていうのが、よく考えると何かもう、恐ろしい。
(村上) すごいですよね。
(江波) そこを一つのメカニズムでもいいから、ちょっと絡んでいきたいなっていう(笑)。そういう思いは、より強くなりました。白眉の生物系の人たちの話を聞いてたら。
(齊藤) ぜひ、絡んでいきたいです。
(江波) ぜひぜひ。(一同)(笑)
(司会) セドリックさんは何かありますか?
(セドリック) 以前、パンチェさん(白眉3期)のジャンピングクリスタルがあったでしょう?
(江波) ああ、見ましたね。
(セドリック) あれは面白かったですね。
(江波) 化学研究所にいたパンチェさん、 あの人は、白眉セミナーでのデモ実験で結晶に光を当てたんでしたっけ。
(セドリック) 焼いただけ。
(江波) 焼くだけ?
(セドリック) うん。温度がちょっとだけ変わって。
(江波) 温度が変わると、結晶がジャンプするっていう。
(セドリック) 転移があってボリュームが一瞬で変わるから、ジャンプする。
(江波) 結構、分野が違いすぎるんで、 直接的にこのアイデアを借りてっていうよりは、どちらかというと、人にインスパイアされるっていうとこがあって…
(セドリック) 確かにそれはそう。
(江波) こんな人いるんやとか。
(齊藤) 僕もそうそう、やっぱり、細胞の進化とかに興味があって。村主さん(白眉1期)が進化モデルを自分のコンピュータで作って、Twitter で、今、進化中、とかずっとモニターしてるような、 セミナーでもそういうのやってたんやけど、銀河のシミュレーションとかっていうのをちょっと生命に応用できひんか、みたいに結構まじめに、村主さんと話したことがあって、すごいぼんやりとはしてるんだけど、何かそういう組み合わせはできる可能性が、今後あるんちゃうかなみたいなのを思ったんですよ。だから、生命の研究も、今はもう本当にトライアンドエラーで、とりあえずこういうもの放り込んでどうなるか見て、その現象の変化を見て、また放り込むもんを考えるみたいなんを、もうちょっとしっかりしたシミュレーションの技術と組み合わせることで、やる実験の数も減らせるかもしれないし、進化とかが実際にできたら面白いなっていうのを思いますね。あの辺、何かうまいこと絡められたら確かに面白い気がする。生物の世界ってほんまわからないことだらけで、もやもや感がたまるんすよ。だから、まあ確かにすごいことが起きるんやけども、じゃあそもそも何でそんなことが起きるのかっていうと、やっぱり現象論に終始してしまうことが多くて。たたいたらできたでみたいな、そういうノリの感じのところもあるから、それをちゃんと化学レベルで、ほんま分子と分子の相互作用でできてるわけやから、そういうことをちゃんと理解するためには絶対に、 今、江波さんが言われてたように、一個一個の仕組みをきっちりしていくほうが、僕としてはすっきり感が出てくるから。やりたいんですよね、そういうの。
(セドリック) 白眉に入ってから一番気になっているのはウォーキングプロテインで、それを見たら僕はいつもその構造をどうやって決めているのかと不思議に思う。僕の研究においてはいつも三つ四つだけの原子があって、それでもどこにあるって分からない時があるのですよ。でもそのプロテインなんかの話では、2000 から 3000 原子あっても完璧に構造が分かるわけです。
(江波) そうなんですよね。だから、 ちょっと昔まで、神様が作ったって思うのも無理ないなと思うんですよね。あと、人間の脳。利根川先生も最近脳やってはるじゃないですか。記憶が脳のどこにあるかとかって。結局、僕らは元素の世界に生きてるわけで、記憶って何だって話じゃないですか。どういう仕組みで記憶が蓄積されていってるのか。有限な、 3D 的に有限な脳みそにほぼ無限とも思えるぐらいの思い出がたまっていくって、何だろうなって。よく考えると。多分そこが、もうさらにやばい。(一同)(笑)
(江波) 多分究極的に脳が一番わけわからないことなんかなって、思いますよね。だからそこに挑戦してる人は本当チャレンジャーやな、と。何かこう、 自分が死ぬまでに解明されないことってあまりやりたくないじゃないですか、 ゲーテも言ってましたし。(一同)(笑)
(江波) 人間には、どんなに頑張ってもわからないことがある。そんなんに人生を使うのは無駄だから、わかることをやれみたいな。(一同)(笑)