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(司会) まず、ご自身の研究分野とその内容について紹介して下さい。江波さんはいかがでしょうか?
(江波) 僕の研究分野は物理化学になります。化学反応や物理現象を分子レベルで理解しようっていう、どっちかというとメカニズムそのものに興味を持っています。その中で僕が特に興味があるのは、大気環境や生体内の界面で、そういう境界相で起こる化学反応なり、物質の挙動みたいなものに興味を持って研究しています。
(司会) セドリックさんはいかがでしょうか?
(セドリック) 私の専門は固体化学で、 新物質を作って、どんな物性があるのか、何に使えるのかを研究しています。 たとえば触媒、超伝導などに試しています。
(司会) 新しいものを作るということですか?
(セドリック) 新しいものを想像してから、いろいろな粉末を混ぜて、焼いたりして合成しています。
(司会) 齊藤さんはどうですか?
(齊藤) 多分、私、化学ではないような気がするんですけど。(一同)(笑)
(齊藤) 今日、ここにいていいのかっていうのが、ちょっと疑問はあるんですが…。一応化学の領域でいうと生化学になるのかなと思うんですけども、分野的にはシンセティックバイオロジー、日本語では合成生物学といわれる分野に近いです。それで興味があるのは、細胞が様々な化学物質や化学反応からどうやって構築されるのかという原理です。そもそもどうやって細胞ができるのかとかわからないですよね。iPS 細胞での初期化のメカニズムもまだよくわからないことが多いし、そういうよくわかんないものを、 細胞を構成する要素を元に、一からボトムアップして作っていくアプローチで理解したい。その理解をもとに、いろんな細胞を精密に制御して、有用かつ面白い技術を開発したいっていう興味を持って研究しています。
(司会) 生化学というのは、細胞の研究を化学の視点でやっていくということですか。
(齊藤) そうですね。特に僕の場合は核酸の一つ、RNA という分子を使ってるんですけども、それを使って細胞の中の化学反応を制御することで、その細胞の運命を制御するとか、その細胞のでき方を理解したいとか、そういうアプローチで研究しています。
(司会) 村上さんはどうですか?
(村上) はい。僕は有機化学という分野でして、有機化学って何かっていうと、 多分セドリックさんの無機化学とはある意味対照的な立場だと思うんですけど、炭素とかさまざまな元素をつないでいって、ものを作るんです。薬だったりとかプラスチックだったりとか、大体身の回りにある有用なものは炭素でできてます。そういう大事なものは絵(化学式) ではいろいろ描けるんですけど、実際にどうやって皆に提供できるよう作るかってのはすごい難しい。簡単に、安く、大量にもの(化合物)を提供できる反応っていうものが有機化学(合成)では目標ですね。しかしこれだけでは、イノベーションは産まれないので、自分が開発した反応で、これまでの方法では作れないものを自由自在に作りたいというのが理想です。この目標と理想が両方かなうような新しい反応を開発して、皆さんの役に立つ薬であったり、材料であったりを新たに提供したいというところに興味をおいて研究してます。
左から齊藤氏、村上氏、江波氏、タッセル氏