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(司会) ところで、ご自身が今の分野を選ばれたきっかけみたいなのは、どういう感じだったのでしょうか?
(江波) 僕は工業化学科の出身なんですけど、3回生に学生実験で有機化学、 物理化学、無機化学、分析化学、生化学を一通りやるんです。結構みっちり 1年間、やるんですよ。それで進路を選びなさいっていうことなんですけど、 それで、物理化学が一番面白かったっていうのが一つと、あと、物理化学の授業がすごく面白くて、熱力学とか化学動力学とか。腑に落ちるのが好きで、 面白いなと思って。村上くんの前で言うのもなんだけども、有機化学、何なのか、あんまわかんない部分があって、(一同)(笑)
(江波) 有機化学の教科書で、ある反応があって、「溶媒が何十%」の「何十%」 の意味がすごい気になるんですよ。この場合は温度 40 度、で、この触媒を使うとこういう反応が起こるってしか書いてないんですよ。それでもう、こういうものができるって覚えなさいみたいな、感じなんですよね。けど、何でそれ 40 度なのか。それは活性化エネルギーだけの問題なのか、高すぎちゃだめなのかとか、あと、何で 40%、例えば 35%だと進まなくなるのかとか、 なぜ?って思っちゃう(笑)。
(村上) 例えば、お酒のエタノールの濃度が、あれでなぜおいしいのかとかそういうレベルで、まあ、おいしいからいいじゃない、みたいな。
(齊藤) できればいいってことね。
(村上) ま、そうですね。だからその裏に、すごく深い化学が広がるんであれば興味が出ますけど、別に、トライアンドエラーで出て、それが普遍的な原理を示さないんであれば、あんまり興味がないですね。ものを作るときは、その微妙なエネルギー差(活性化エネルギー)の勝負なんですよね。それはものによっても違うし、それぞれの反応に応じて、いい条件があって、それを探したらいいんじゃないっていうのがありますね。
(江波) なるほどね。
(司会) 村上さんはどうですか。どういったところから、有機化学に?
(村上) 有機化学ですか。そうですね、 僕はもともと物理とか数学がすごい好きだったんですが、全然センスがなかった。見てても何も思い浮かばないんですよね。言われたことは一通りわかるけど、だから自分でこれやってみたいとか全然出てこなくて。ただ有機はこれやってみたらどうなるんだろうとか、 こんなもん作ってみたら面白いかなとか、そういうのがあったんで有機を選んだってのはありますね。
(江波) 試せるもんね。目で見えるよね、 結果が。
(齊藤) 物理化学が嫌いやったからとかではないっていう。(一同)(笑)
(司会) セドリックさんはどうですか?
(セドリック) 皆、きれいに説明したけど、僕はばかかもしれないけど、子供の頃、建てることがめちゃ好きでしたからよくレゴで遊んでいました。それがあって化学研究者になる夢を持っていました。物理化学の先生にもなりたかったが大学に入ってから、実験を体験したら、 やっぱり研究者になりたいと分かりました。有機科目の成績が結構良かったです。 でも有機のにおいが強く、ガマンできないから無機を選びました。(一同)(笑)
(司会) 齊藤さんはどうだったのでしょうか?
(齊藤) 僕もともと、宇宙の起源とかが好きで、宇宙物理に行こうと思ってたんですよ。で、宇宙物理に入ろうと思って、 で、行って授業受けても全く相対性理論の授業とかがわからず、それでもうこれではめしは食えないと思って、さすらう 1、2回生の生活をすごしてたときに、 授業で延々とですね、利根川進先生っているじゃないですか、利根川さんのビデオを、担当の先生が何もしゃべらんと流し続ける授業があって、(一同)(笑)
(齊藤) ほんまに。全く先生しゃべれへんで 60 分そのビデオ見てて、何やこれ、 と思って見てたら結構面白くて。その細かいところはよく覚えてないけど、利根川さんが分子生物学がとても面白い、分子生物学者は、人生をコントロールできる職業だとかいって熱弁しておられる。 で、宇宙の起源に元々興味があったので、 分子生物で人生をコントロールできて、 生命の起源がわかれば面白いと思って。 生命の起源とかやるにはやっぱり化学反応を理解する必要があって、化学生命工学科っていうとこにいきました。
(司会) そのビデオは興味ありますね。(一同)(笑)