応募書類の受付は4月26日13時に締め切りました。
書類の受諾状況は、5月中旬頃に応募者登録サイトに表示されます。
"Application forms were closed at 13:00 on 26 April.
The acceptance status of documents will be displayed on the registration website around mid-May."
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坂部氏 では、藤井さん、お願いします。
藤井氏 藤井俊博と申します。私の方からは、最高エネルギー宇宙線を掴まえるということでお話します。私自身は小さい頃から、星を見るのが好きだったのですが、物理学者に憧れたきっかけは2002年のノーベル賞受賞、小柴昌俊さんですね。高校生の時に、研究者が作り出した装置で宇宙から飛んできた何やらすごいもの(ニュートリノ)を掴まえたということを知ってすごく驚き、面白そうだなと思ってこの業界を目指しました。
宇宙線は宇宙空間に存在する放射線で、地上に絶え間なく降り注いでいて、1秒間に手のひらに1個到来しています。今、皆さんが手を広げると、ほぼ1秒ぐらいの間にスッと通っているはずですけど、恐らく誰も意識していないかと思います。我々が身近に見ているのは、10の6乗とか7乗エレクトロンボルト(eV)のエネルギーを持っているのですが、エネルギーがずっと高くなると数が少なくなります。10の15乗eV というエネルギーになると、1年間に1平方メートル当たりに1粒子しかやってこないので、1年間観測し続けないといけません。さらに10の18.5乗eV になると1粒子が1平方キロメートル当たりに1個しかやってきません。
私が興味がある最高エネルギー宇宙線というものは、10 の19.5乗eV以上の宇宙線で、それは年間100 平方キロメートル当たりに1個しか到来しません。非常に頻度は少ないのですが、我々人類が加速して到達できるエネルギーよりも7桁も大きく、宇宙に在する最大のエネルギーの放射線です。到達頻度がとても少ないため、検出には非常に大きい面積を持った検出器と長い定常観測が必要不可欠になります。
この最高エネルギー宇宙線がどこでできているのか、どうやって地球までやって来ているのかというのは、まだ明らかになっていません。起源の候補としては我々の銀河系、天の川銀河より外側の、ものすごく爆発的な天体現象で加速しているのではないかというふうに考えられています。例えば、超巨大ブラックホールを持つ活動銀河核だとか、宇宙最大の爆発現象であるガンマ線バースト、もしくは我々が知っている標準的な物理法則を超える新しいエキゾチックな新物理からのものではないかと提唱されています。
宇宙線は荷電粒子の放射線なので磁場で曲げられてしまいますが、エネルギーは高くなればなるほど曲げられにくくなるため最高エネルギー宇宙線はある特定の方向から来ているのではないか、と考えられています。その発生源を見付けると、宇宙線の発生源を明らかにするための新しい天文学的なアプローチができることになります。そのために私は、最高エネルギー宇宙線の観測を継続しています。次世代天文学の確立を目指して、宇宙における極高物理現象、最高エネルギーへ加速するメカニズムは何なのかというのを明らかにするために研究を続けています。
非常に少ない最高エネルギー宇宙線を掴まえるため、我々は特製の宇宙線専用の「網」を張っています。放射線の検出器を非常に広い範囲に所々置きます。一つのエネルギーの非常に高い宇宙線が大気とぶつかって大量の100億粒子になって地上に到来するのですが、それが半径3kmほどの範囲に展開されます。なので、地上に放射線検出器を3km以内に置くと、全ての検出器がほぼ同じタイミングで信号を検出します。その情報から、どの方向から来たのか、どれくらいのエネルギーかということを推定します。では、これまでに観測された最高エネルギー宇宙線の観測結果ですが、5×10の19乗eV 以上の宇宙線が、約1000事象観測されています(図1、図2)。これは宇宙の方向を銀河座標で表していまして、1eVの可視光で見るとこのように銀河面が見えて、10の9乗eVのガンマ線で見るとこのように銀河面が見えるわけです。ですが、我々の最高エネルギー宇宙線の観測結果を見ますと、こちらの方向に少し集中しているかな、こちらの方向からも少し集中しているかなというふうなのが見られますが、銀河面には見られない。これは、我々の天の川銀河よりも遠い起源天体から来ていることを示唆しています。
この最高エネルギー宇宙線専用の「網」を張るには、1人の力では難しいため国際共同研究を行っています。世界各国から集まった150 人程度の研究者で会議を行います。コロナ禍になる前は、アルゼンチンにある観測所で、最新結果についてお互いの研究の進捗を報告し、御飯をみんなで食べ、夜遅くまで議論するということをやっていました。
坂部氏 ありがとうございました。
図1:最高エネルギー宇宙線の観測結果
図2:地球大気に突入する最高エネルギー宇宙線の想像図