2016年度年次報告会(2016年4月18日/金宇大)

去る4月18日、今年も京都大学芝蘭会館で、年に一度の白眉年次報告会が開かれました。2016年度の報告会テーマは、「人はなぜ進化に惹かれるのか?――宇宙・生命・言語・思想における進化の様態比較」。「進化」をめぐる様々な学問分野の研究アプローチに触れつつ、翻って自分自身の研究の在り方を再考しようという趣旨で設定されました。前半は、キーワードの「進化」を軸とし、テーマに示された宇宙、生命、言語、思想の各分野の白眉研究者にそれぞれの切り口で発表していただきました。演題は、宇宙鉱物学から瀧川晶助教(6期)による「宇宙における物質循環」、生態学・進化生物学から山道真人助教(5期)による「進化が絶滅に与える影響」、歴史言語学・中央アジア出土写本を研究されている荻原裕敏准教授(6期)の「時間と言葉」、圏論的双対性・数理哲学を専門とされる丸山善宏助教(6期)の「意味の進化論」。各講演では、日頃自身が取り組んでいる研究の話から次第に「進化」の概念へと論が及び、それぞれの立場から独特の理解が示されました。分野ごとの色合いの違いが鮮やかに対比され、学問の多様性を改めて実感することができました。

全白眉研究者によるポスターセッションでは、例年通り、様々な分野における最先端の研究成果が一堂に会しました。会場ではあちらこちらで分野を超えた議論が交わされ、白眉プロジェクトならではの「学問のるつぼ」とでもいうべき場が展開されました。後半は、東京大学大学院総合文化研究科からお呼びした2名の先生方の招待講演です。まず、長谷川寿一教授の「日本における人間行動進化学研究の歩み」と題した講演をお聞きしました。人間行動進化学という分野がいかなる学問でどのように研究されてきたのかを非常に丁寧に整理していただき、知識の土台を固めることができました。その上で、岡ノ谷一夫教授に、生物心理学の分野から「鳴き声から言葉へ、そして心へ」という講演をうかがいました。鳥のさえずりパターンの解析から言語の起源へと迫っていくお話は非常に斬新で興味深く、大きな衝撃と刺激を受けました。

参加者や登壇者同士で質問を出し合ったトークセッションは、それぞれの好奇心を満たしきるにはあまりに短く、報告会が終わった後も、場外での議論の延長戦は尽きませんでした。

(きむ うだい)