第202回白眉セミナー : 『 初期浄土教美術の起源と生成-弥勒菩薩か?弥勒仏陀か?- 』
  • 田辺 理(第11期 文学研究科 特定准教授)
  • 2021/09/07 4:30pm
  • Zoom(京都大学および白眉センター関係者限定)
  • 日本語

要旨

現在のパキスタン北部を中心としたガンダーラでは、1世紀から3世紀の間に、ギリシア・ローマ美術の技法を用いて、インドから伝播した仏教の内容を造形化した仏教美術が栄えた。ガンダーラでは従来、小乗(上座部)仏教が盛んであり、仏教徒は死後生天を望んだといわれている。この生天思想は、功徳を積んで死後天界に再生復活し、様々な快楽を長期にわたり享受するという考え方である。仏陀(釈尊)は死後、天界に生まれ変わる生天思想を、主に在家仏教徒に勧めたことが知られている。

この生天思想を表現したものが、ガンダーラの兜率天上の弥勒菩薩を表したといわれている図像である。弥勒菩薩は死後に天界の兜率天に生まれ、その後56億7千万年後に、天からこの地上に降下して仏陀となる。この弥勒菩薩が兜率天において、死後生天した人々に説法をする場面を表したものが、兜率天上の弥勒菩薩の図像であるといわれてきた。特に、今回の発表では、兜率天上の弥勒菩薩と呼ばれるガンダーラの彫刻に表された図像が、弥勒菩薩を表したのか、弥勒仏陀を表したのか?再考察したい。

関連する研究者

田辺 理