第200回白眉セミナー : 『 森林の樹木群集における生物多様性のパラドックスを紐解く 』
  • 門脇 浩明(第11期 農学研究科 特定准教授)
  • 2021/07/06 4:30pm
  • Zoom(京都大学および白眉センター関係者限定)
  • 英語

要旨

地球上の生命は驚くほど生物多様性に富んでいるが、これほど多くの種がどのようにして生まれ、どのようにして維持され、そして、もし失われたらどうなるのであろうか。生態学者は、この数十年の間に、生物群集における種の分布と豊富さ、そして生物多様性の出現・維持・喪失の背後にある複雑なメカニズムを理解する上で、飛躍的な進歩を遂げてきた。私の研究プログラムでは、自然の森林生態系における種がどのように相互作用し、共存や遷移などの巨視的な特徴を形成しているかを明らかにすることに重点を置いている。本セミナーではまず、森林の樹木群集における複雑な種の相互作用とその共存・遷移への影響を研究するために、フィールド実験をどのように利用できるかを紹介する。その中で、土壌微生物と葉を食べる昆虫が、樹木群集の初期段階を決定する上で重要な役割を果たしている可能性を示す。後半では、京都大学芦生研究林の6haの永久植生調査区において、成木、苗木、種子トラップの長期センサスデータを用いて、樹木群集の動態を分析した結果を紹介する。モデル化により、長期的な樹木群集動態を説明する上で、複数の共存メカニズムが重要である可能性について論ずる。以上から、フィールド実験、長期モニタリング、モデリングを組み合わせることで、森林の樹木の多様性の要因をより深く理解することができることを示したいと考えている。

関連する研究者

門脇 浩明