第190回白眉セミナー : 『 アーカイブズへの探求―日本中世の仏教写本のデジタル・ヒュマニーティーズによる分析とその可能性 』
  • ラポー ガエタン(第10期 人文科学研究所 特定准教授)
  • 2020/12/22 4:30pm
  • ZOOM(白眉センター内限定)
  • 日本語

要旨

近年、歴史学の分野において重要視されているのが「アーカイブス」学である。この研究は、歴史資料の物質的な側面に着目すると同時に、そのデジタル化、デジタル・ヒューマニティーズの分野の手法を用いた分析を行うことに特徴がある。この新しいアプローチにより、マニュスクリプト(手稿本)は、単に情報を伝えるだけの媒体、情報源には留まらない存在としてみなされるようになった。マニュスクリプトとしての形態の物質的側面、さらにその保存方法、アーカイブスの構築過程そのものも、歴史研究の対象として捉えられるようになったからである。
本発表では、この新手法を中世日本の宗教資料の分析にどのように用いることが出来るのかを具体的に示す。まず、中世の手稿本のデジタル化の過程について示す。次に、日本中世の宗教テクストをデジタル化するにあたって、他の言語圏の資料には見られない難しさがあること、さらにその克服方法の模索を説明する。更に、この過程を経た複数のテクストを横断的に分析することで、証明の困難であった作者間の引用の問題、思想の広がり―特に、これまで試みられてこなかった宗派横断的な思想の流れ―を長期的に見ることが出来ることを示したい。

関連する研究者

RAPPO Gaétan(ラポー ガエタン)