『 わらわやみのなぞ 』
見えざる脅威としての疫病を特定し対処することは有史以来人類にとって最大の課題の一つであり、近代における病原体「伝染性生物(contagium vivim/animatum)」思想形成に古代ローマのエピクロス派ルクレティウス(B.C.99-55)の「事物の種子(semina rerum)」が大きな影響を与えたことはよく知られている。一方対立する「瘴気(μίασμα/miasma, mal aria)」説はレーウエンフックならびにパスツールによって否定され、やがて姿を消すことになる。さらにはインド伝統医学において疫病の要因はもっぱら両者の性質をあわせもつ微細な鬼霊(bhūta)であるとされた。 本発表では古代から知られる間歇性の熱病「瘧病(ぎゃく・おこり・わらわやみ)」を一つの手がかりに7世紀後半から8世紀前半のナーランダ僧院において古き仏教医学が新興のインド医学に置き換えられる過渡期の伝統が「防護経典(rakṣā literature)」と呼ばれる聖典群を通して伝承された経緯について考察したい。
オープニング・トーク
白眉の日々
本講演では私の白眉プロジェクト「数学・物理・言語の圏論的基礎と統一的世界像」を纏め結論付けると共に思弁的な未来を展望します.