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(司会) 初めに皆さんがされている研究について伺いたいと思います。王さん、 お願いします。
(王) 私は中国系の移民について研究しています。主にタイをこれまでやってきましたけども、中国に行ったり台湾に行ったり、最近は他の地域にも行っています。
(司会) 中国系の移民の人たちには何か特徴があるんですか?
(王) そうですね、親族関係が中国から東南アジアに広がっていて。移民を追いかけていると親族が国境を越えているので、複数の地域をまたいだ研究になるんです。
(司会) 専門領域としては、地域研究、 文化人類学ということなんですね。
(王) そうですね、加藤さんと同じところの出身なんです。
(司会) そうなんですね。では、そのつながりで加藤さん、ご自身の研究紹介をお願いします。
(加藤) 私も王さんと同じく文化人類学や、東南アジア地域研究が専門です。 これまでは「狩猟採集民」と呼ばれている、主に森の中で動物を狩猟したり、植物を採集して、生活をしてきた人々の研究をしてきました。特にマレーシアのボルネオ島という島があるんですけれど、そこに住むシハンというエスニックグループを対象に研究をしてきました。ボルネオ島では森林伐採やアブラヤシのプランテーション化が進んでいるので、そういった開発に対して、 人々の生活がどのように変容しているのか、どのように人々が対応しているのか、といったことに着目して研究をしています。
(司会) では次に坂本さん、お願いします。
(坂本) 僕は、ブータンという国で、高齢者医療を展開する仕事をしています。 ブータンでは、もともと母子保健とか、 感染症が主な課題だったんですけど、 それがうまくいってきたということで、 さらなるターゲットとして今、高齢者に眼が向けられているんです。ブータンでは伝統的に親族や隣人によって高齢者のケアはされてきたんだけど、若者が地方から都会に出てくる現象がはじまってきているので、日本の経験を学びながら、ブータン人自身がブータンに合ったやり方で、高齢者ケアを行うのに協力したいと思っているんです。
(王) 何でブータンなんですか?
(坂本) ブータン、僕があこがれてたんですよ、ずっと(笑)。小学校のときから。(一同)(笑)
(坂本) 僕が小学校 6 年のときに、当時のブータンの国王が日本に来たんですよ。そのとき、王様の態度がかっこいいなと思って。服も日本の着物にちょっと外見似てるし、あと顔も似てるんですよ。いいなと思って。いつか行きたいなと思ってたら、そういうチャンスが来たんですよね。
(司会) 前野さんはどういったご研究をされているんですか?
(前野) 自分はアフリカで大発生するサバクトビバッタというバッタの生態を研究しています。小さい頃から昆虫学者のファーブルにあこがれて、将来昆虫学者になりたいなと思って昆虫学を専攻しました。学生時代に外国から輸入したこのバッタを研究し始めたら、 面白くてはまりました。このバッタは、 農産物を食い荒らし、大勢の人々が飢えに苦しむという、社会的なインパクトも与える重要な害虫です。昔、アフリカが植民地だった時代は、ヨーロッパの人たちが気合入れて研究していたんですけども、アフリカ諸国が独立してからは、現地で研究してる人がほとんどいなくなりました。現地でフィールド調査したら何かきっと新しいことがわかってくるんじゃないかなっていうので、西アフリカのモーリタニアに行くことになりました。
(加藤) 昆虫学ではフィールドワークっていう手法は、一般的なんですかね。
(前野) はい、基本中の基本ですけど、 大半の研究は実験室で行われていると思います。自分は、実験室の人工的な環境下で見えるものを自然だと誤解していたのですが、実際に生息地に行ってみたら、砂漠なので温度は劇的に変化するし、乾燥もひどいし、餌も全然ないときもあり、自然とリンクした姿を見ないと、やっぱりバッタの生態を知れないなっていうのに気づきました。 自分は現地に行って本当によかったです。
左から前野氏、加藤氏、王氏、坂本氏