第65回白眉セミナー : 『越境ムスリムたちの絆とコミュニティの再生-中国から北タイへ』
- 王柳蘭 (京都大学白眉センター)
- 2013/10/01 4:00pm
- 白眉センター(iCeMS西館2階 会議室)
- 日本語
要旨
生老病死に向き合う人間にとって、宗教は人生のさまざまなターニングポイントで心の支柱になり、活力を与えてくれる源泉である。と同時に、同一の信仰をもっている、あるいはもとうとする人々の間には、人と人を結びつける絆が生み出され、強化され、ひいてはコミュニティを再生、創造していくうねりにもつながっていく。 中国でイスラームを信仰していた雲南省出身のムスリムは20世紀半ばの中国国共内戦の混乱を逃れて、その一部がミャンマーをへてタイに越境した。戦乱、不法、貧困など難民状態が常態化しつつあった越境プロセスのなかで、中国系ムスリムたちは異境の地でどのように信仰を維持し、人と人のつながりを開花させたのであろうか。 地域の歴史と個人の信仰を超えたところに生み出される移民コミュニティの潜在力は、既存の国家やボーダーのあり方を私たちにつきつけ、再考を迫ってくるのである。