第6回白眉セミナー : 『化合物と化学反応をコンピュータで自動的に予測する』
- 前田 理(京都大学次世代研究者育成センター)
- 2010/07/20 4:00pm
- 次世代研究者育成センター(iCeMS西館2階 会議室)
- 日本語
要旨
全ての化合物は118種類の原子からできており、原子の配列の違いによって異なった性質を示します。炭素、水素、酸素、窒素の4種類の原子からだけでも膨大な数の異なる化合物を作ることができ、創薬や環境問題など様々な分野で有用な化合物をめぐって、世界中で合成研究が続けられています。実際に、2010年現在、アメリカ化学会のデータベースには約5千万種もの化合物が登録されており、さらに、約1万4千種類が毎日新しく追加されていっています。また、個々の化合物にはいくつもの合成方法が存在し、特に有用な化合物に関しては、より効率的な合成経路を探す研究が盛んに行われています。
もし、コンピュータを用いて化合物や合成経路を自動的に探索できる方法が確立すれば、今よりもはるかに効率的な反応設計が可能になると期待されます。理論的に化学反応を記述する方程式は、1926年にシュレディンガーによって発見されました(シュレディンガー方程式)。その後、その方程式を解いて反応を含む化学の諸問題を解析する学問、理論化学・計算化学、が誕生し、多くの研究者の手によって発展してきました。しかし、化合物と化学反応をコンピュータで自動的に予測できる方法論は、非常に最近になるまで見つかりませんでした。本発表では、これを可能にする二種類のアイディアについて解説し、それらを用いた化学反応経路自動探索法の開発について展望したいと思います。