『ブラックホールと弦理論』
ブラックホールは宇宙で最も不可思議な現象の1つであろう。その非常に強い重力のため、ブラックホールに落ち込んだものは二度と外に出ることはできない。しかし、これは古典論における描像であり、量子効果を考慮するとさらに興味深い現象が起こることがわかる。例えば、ブラックホールに落ちたものは非常にゆっくりと外に出てくることができるし、また、ブラックホールは実は多数の微視的状態から構成されていて、それらを粗視化することにより古典的なブラックホールが近似的描像として現れると考えられる。このようなブラックホールの量子的側面の理解には、重力の量子論すなわち弦理論が必要である。本講演では、弦理論を用いてブラックホールの量子的物理を理解する研究を概説する。