第53回白眉セミナー : 『中華と対話するイスラーム』
  • 中西 竜也(京都大学白眉センター)
  • 2013/01/08 4:00pm
  • 白眉センター(iCeMS西館2階 会議室)
  • 日本語

要旨

中国ムスリムが歴史上にとりもってきた、イスラームと中華のあいだの文明間対話を話題とします。ここでいう中国ムスリムとは、来華ムスリム移民の末裔で、漢語を日常語とするムスリムたちのことを指します(新疆のトルコ語系の言葉を話すムスリムたちのことは指しません)。彼らは、おそくとも16世紀の初頭には中国全土各地に独自のコミュニティを形成し、以来、中国社会の不可分の一部を占め、今日まで至ります。現在の中国では、「回族」と呼ばれる人々に、おおむね相当します。回族は、現在、1000万人の人口を数えるといいます。この数は、多くの国の人口を上回りますが、13億以上の人口を擁する中国では圧倒的少数派となります。彼らは歴史上もずっとマイノリティでありつづけてきました。ゆえに彼らは、中国社会のなかで生き残るために、イスラーム文明と中華文明のあいだを架橋する文明間対話を実践してこなければなりませんでした。たとえば、イスラームと中国伝統思想(儒教、仏教、道教)を調和させたり、イスラーム法と中国法を調停したりする必要がありました。その歴史的経験は、今日の文明間対話を考えるうえで、貴重な鑑というべきでしょう。

関連する研究者

中西 竜也