第35回白眉セミナー : 『宗教的文脈の中の言語:古代イタリアから届く声』
- Wolfgang de MELO(ヘント大学),西村周浩(京都大学次世代研究者育成センター),Brent VINE(UCLA/京都大学)
- 2012/02/07 4:00pm
- 次世代研究者育成センター(iCeMS西館2階 会議室)
- 英語
要旨
紀元前1千年紀の古代イタリアは、インド・ヨーロッパ(印欧)語族イタリック語派に所属する諸言語(ラテン語、ウンブリア語など)、同語族のギリシア語、系統不詳のエトルリア語、さらに、印欧語族ながらイタリック語派への所属が確定しない諸言語(ヴェネト語など)が共存する言語の坩堝であった。つまり、後に大言語となるラテン語も当初はローマ周辺のラティウム地方に限られた一言語に過ぎなかった。ギリシア語の話者であるギリシア人たちは、紀元前8世紀頃からイタリアに植民を始め、様々な物質文化とともに文字をその地に伝えた。まもなくして、他の諸言語も文字活動を開始し、その記録の一部が碑文や写本という形で現代の我々に伝わっている。残された文献資料はジャンルの点で多岐にわたるが、その根底において当時の宗教が果たした役割は大きい。宗教に関連する語彙や語法、文体の研究は、古代イタリア文化を理解する上できわめて重要である。その一方で、宗教という特定の文脈が言語に及ぼしうる因子(規範化・特殊化)を探るという逆の視点も可能になってくるだろう。本セミナーはこうした視座に立脚し、宗教的文脈という特定の言語使用の場が照らし出す言語の特徴を探る。それによって、人間の精神的営みと言語が連動する様子が明らかになるだろう。
本セミナーは国際コローキアムとして組織され、本センター所属で企画者の西村周浩とともに欧米から参加するWolfgang de MeloとBrent Vineの3人による講演を中心にプログラムが組まれている。
- Wolfgang de MELO (University of Ghent):
“Venetic Dedicatory Inscriptions – Language in Context”
- Kanehiro NISHIMURA (The Hakubi Center):
“Latin Mārs and Māvors: Language in Hyper-religious Context”
- Brent VINE (UCLA / Kyoto University):
“Bird-watching in Ancient Italy: Some Umbrian and Roman Augural Vocabulary”