第34回白眉セミナー : 『個人化する日本社会-サラリーマン生活の揺らぎを通して-』
- 村田陽平(京都大学次世代研究者育成センター),ゲストスピーカー: 多賀太(関西大学)
- 2012/01/24 4:00pm
- 次世代研究者育成センター(iCeMS西館2階 会議室)
- このセミナーは主に日本語が使用されます(PPTの英訳付き)
要旨
今日の社会理論では、人間社会は、20世紀の終わり頃を境として新たなステージに移行したと考えられている。この新しい段階の大きな特徴の1つが「個人化(individualization)」と呼ばれる側面である。社会の変化のスピードが速まり、生き方の「標準」が失われていくなかで、社会は次第に人生のあるべき姿を示してくれなくなった。人びとは自らの生き方をその都度「自己選択」しなければならず、その結果は「自己責任」と見なされ、社会による救済はますます期待できなくなってきたというのである。
この「個人化」が現代の日本社会で具体的にどのように進行しているのかを確認するにあたり、本セミナーでは、サラリーマン生活の揺らぎに焦点を当ててみたい。「サラリーマン」は、「一億総中流」と言われた戦後日本経済の絶頂期における、日本人男性の標準的な生き方モデルであった。かつての「標準」であった彼らの生活状況をつぶさに見ていくことは、女性や他のタイプの男性も含めた日本人の生活と人生行路の変化を説明するうえできわめて重要であると考えられる。
話題提供では、個人化論の概略を述べた後、聴き取り調査で得られた事例と既存の統計資料を用いて多様化するサラリーマンの生活状況を提示し、それをグローバル化、労働環境の変化、家族生活やジェンダーの変化といった視点から読み解いていく。後半では、オーディエンスとともに、サラリーマン生活の揺らぎを映し鏡としながら、研究者の今後の生活と人生行路のあり方についても議論を深めてみたい。
参考文献:多賀太編著『揺らぐサラリーマン生活-仕事と家庭のはざまで-』ミネルヴァ書房、2011年。