第30回白眉セミナー : 『細胞のエネルギーと情報を担うアデノシン3リン酸(ATP)』
- 今村 博臣(京都大学次世代研究者育成センター)
- 2011/11/15 4:00pm
- 次世代研究者育成センター(iCeMS西館2階 会議室)
- 英語
要旨
我々が日々の生活の中で使う電気のエネルギー(電力)は、そもそも様々なソース(石油、風、光、放射性同位体等)に蓄えられていたエネルギーを使いやすい形に変換したものです。実は生き物も全く同じ戦略をとっています。生き物は糖や脂質などをエネルギー源として取り込みますが、それらの持つエネルギーはいったん「アデノシン3リン酸(ATP)」という化学物質の化学結合エネルギーとして変換されてから様々な化学反応に使われます。ATPは生き物が生きていくために無くてはならない、最も重要な化合物の一つです。筋肉が動くときにも脳が考えるときにも、ATPのエネルギーが使われています。以前は、ATPは細胞の内部で常に一定量存在するという考え方が支配的でした。ところが、最近になってATPが細胞内のエネルギーとしての働きだけでなく、細胞内外で情報を伝えるシグナルとしての働いているらしいことがわかってきました。このことは、細胞の内外でATP量がダイナミックに変化していることを意味しています。ところが、生きた生き物の内部でATPがどのように分布し、どのように変化するかはこれまでほとんどわかっていませんでした。本白眉セミナーでは、ATPの働きを概観した後、演者らが開発した細胞内ATP可視化技術を中心に最新のATP研究をご紹介します。