第3回白眉セミナー : 『腎臓はどこまで直せるのか:その再生機構の解明』
  • 柳田 素子(京都大学次世代研究者育成センター)
  • 2010/06/01 4:00pm
  • 次世代研究者育成センター(iCeMS西館2階 会議室)
  • 日本語

要旨

体の中の老廃物を尿中に排泄し、血液をきれいに保ってくれる大事な臓器「腎臓」。この機能が様々な理由で低下する「慢性腎臓病」が今、問題になっています。

慢性腎臓病は、糖尿病や腎炎など色々な原因でおこりますが、自覚症状がほとんどないままに進行し、腎不全に陥ると、人工透析や腎移植を行なわないと生命を維持することができなくなります。

今、慢性腎臓病は急増中で、成人人口の5人に1人に上ると推定されています。そしてそれが進行して透析が必要となった患者は28万人で、さらに毎年1万人ずつ増加しています。透析の医療費は一人あたり年間600万と言われており、その総額は年間1.5兆円を越えていることから、慢性腎臓病は、国民の健康にも、医療経済にも大きなインパクトがあると言えます。

現時点では進行した慢性腎臓病を治癒させる薬はありません。その一因として、慢性腎臓病がどうして進行するのか、その根本的な病因が分かっていないことが挙げられます。さらに腎臓は20種類もの異なった機能の細胞群からなる精密な臓器であり、その解析が困難であることも理由の一つです。

本発表では、腎臓が私達の体内環境を保つ精密なメカニズムを紹介し、その破綻がどのようにして起きるのか、再生を担う細胞はいるのか、その治療の可能性についてお話したいと考えています。

関連する研究者

柳田 素子