第28回白眉セミナー : 『エントロピーと情報を結ぶ熱力学第二法則』
  • 沙川 貴大(京都大学次世代研究者育成センター)
  • 2011/10/18 4:00pm
  • 次世代研究者育成センター(iCeMS西館2階 会議室)
  • 英語

要旨

「情報」と「物理法則」は一見するとお互い関係のないものに見えますが、両者の間には実は密接な関係があります。歴史的には、情報と物理の関係は、19世紀の物理学者マクスウェルが考えた思考実験にまでさかのぼります。彼が考えた「マクスウェルのデーモン」は、物質を分子レベルで精密に観測してその「情報」をうまく使うことで、熱力学第二法則(エントロピー増大の法則)に一見すると反したことができるように見えました。そのため、デーモンは熱力学の根本原理を脅かす厄介者と思われてきました。しかし現代では、ナノテクノロジーやナノサイエンスの進歩により、実際に実験でデーモンを作れるようになり、デーモンは「情報」と「物理」を統一する鍵となることが認識されつつあります。このセミナーでは、熱力学と情報理論の導入から出発して、情報を含む形に一般化された熱力学について議論します。とくに、我々の理論と実験の最近の研究成果をご紹介します。

関連する研究者

沙川 貴大