第260回白眉セミナー : 哲学的急進派と古代ギリシア受容:民主政、ソクラテス、帝国の観点から
- 村田 陽 特定助教(14期・経済学研究科 )
- 2024/12/17 4:45pm
- 学術研究支援棟地下会議室1&2
- 英語
- オンサイト
要旨
哲学的急進派とは、18世紀後半から19世紀半ばにかけてイングランドで活動した著述家、政治家、政治経済学者、哲学者たちであり、彼らはジェレミー・ベンサムの功利主義に基づく政治・社会改革に幅広く携わった。そのなかでも、とりわけジョージ・グロートとジョン・スチュアート・ミルは、古代ギリシアの著作から深く影響を受けていた。彼らは「ギリシアに陶酔した」と評されることもあった。なぜこの二人の急進派は、現在を変革するために過去を振り返る必要があったのだろうか?この問いを検討するために、本報告では、古典古代受容についてグロートの著作『ギリシア史』(1846-56年)・『プラトン』(1865年)と、ミルによって公表されたこれらの書物に対する書評論文を取り上げる。その際、彼らの論敵である「保守派」の言説との比較を行う。グロートとミルには若干の解釈上の相違点があった一方、両者は前450年頃の民主的なアテナイとソクラテスの方法論を称賛した。白眉プロジェクトにおいては、ギリシア受容が英国の帝国論に関わる争点であったことを検証する。概して本報告では、急進派の解釈は、トーリー(保守党)と新プラトン主義に対抗するリベラルな思想を反映していたことを結論づける。