第26回白眉セミナー : 『水の界面の不思議:海洋表面から肺の表面まで』
- 江波 進一(京都大学次世代研究者育成センター)
- 2011/09/20 4:00pm
- 次世代研究者育成センター(iCeMS西館2階 会議室)
- 英語
要旨
我々の身の回りにおける様々な環境の中でもっとも興味深く本質的な現象は「界面」で起きています。界面とは液体などの相が他の相と接している境界を指します(水と空気の境界、水と細胞膜の境界など)。例えば中性(pH = 7)の水の界面は実は中性ではなく「アルカリ性」であるという非常に興味深い現象が100年以上前から知られています。しかしその原因は未だによくわかっていません。海洋表面の酸性度は二酸化炭素ガスの取り込みを制御しており、その理解は極めて重要です。また生物の体内においても水と細胞膜、また空気と肺の上皮被覆液など様々な界面が存在し、それぞれ未知の役割を果たしていると考えられます。例えば人間がオゾンなどの大気汚染物質を吸い込んだ時に肺の上皮被覆液に含まれるアスコルビン酸(ビタミンC)が界面特有の反応を引き起こすことが予想されています。本白眉セミナーではこれらの水の界面にまつわる現象の解明の進展と今後の展望・研究戦略についてお話ししたいと考えています。