第25回白眉セミナー : 『数学における無限』
- 岸本 展(京都大学次世代研究者育成センター)
- 2011/09/06 4:00pm
- 次世代研究者育成センター(iCeMS西館2階 会議室)
- 英語
要旨
私たちはしばしば、非常に多いさまを「無限」や「無数」等と表現しますが、それが実際に「限り無く」多いとは限りません。例えば夜空に瞬く「無数の」星でさえその個数は有限です(と考えられています)。一方、数学で扱う無限は本当の意味で「限り無く」多いことを指し、例えば自然数(小数部分を持たない正の数)は星の個数よりもはるかに多く無限に存在します。自然数を一つずつ数え上げることで全て理解するのは、有限の時間しか持たない私たちには不可能であり、従って数え上げを無限に行う思考実験を通して自然数全体を捉えることになります。それでは分数や小数も含めた「数」全体を捉えるにはどうすればよいでしょうか? この場合は自然数のようにきれいに並んでおらず、どんな2つの数の間にも別の数がぎっしりと詰まっているので、規則的に数え上げることすらできません。 数学においては、何らかの操作を無限に行った結果として対象を表現することがよくありますが、どのような操作なら意味のある対象を得られるか、は微妙な問題です。また、数学という学問の最も基本的な研究対象である「数」そのものでさえ、厳密に定義しようとすると非常に難解な手順を踏まなければなりません。本セミナーでは、こういった問題に対する数学的なアプローチの仕方について可能な限り平易な言葉で解説を試みます。時間が許せば、講演者の専門分野である微分方程式に関連する話題にも触れたいと思います。