脳はよく神経細胞の集まりと捉えられていますが、実は脳の半分近くは「アストロサイト」という神経細胞とは異なる細胞でできています。アストロサイトは長らく神経細胞に最適な環境を提供するだけの存在と考えられてきました。しかし近年の研究で、「アストロサイトの活動が学習や記憶とはじめとする脳の重要な機能に必須である」ことが分かってきました。そこでアストロサイトの生理を理解することが急務と考えられている訳ですが、アストロサイトの突起の構造が大変緻密で通常の光学顕微鏡ではよく見えないことがネックとなってきました。私は「超解像顕微鏡」という従来の光学顕微鏡を超えた解像度を実現する顕微鏡を用いることで、アストロサイト微細突起の形態や活動を明らかにしてきました。白眉プロジェクトでは「これらの微細突起の性質がどのように神経回路の性質を決めているか」を明らかにします。本セミナーでは本研究のこれまでとこれからについてご紹介致します。