単一の宗教としての「ヒンドゥー教」は近代の構築物であるとの指摘がある一方で、近代以前のインドの信仰と実践の形態を精査し、近代において何が変わり、あるいは何が変わらなかったのかを検証すべきことが特に近世研究者により主張されている。本研究は、中・近世期に大きく発展し、現在でもヒンドゥー教徒によって盛んに行われている聖地巡礼を対象にしてこの問題に取り組もうとするものである。本研究の背景には、現代のヒンドゥー教を捉えるために、現地調査と宗教史的アプローチを組み合わせる方法を提示するという発表者の将来的な目標がある。本発表では、白眉プロジェクトでの研究計画を概観した後、発表者の採用する方法や目的を具体的に示すために、「ガヤー」という北インドの聖地の歴史と現状に関する拙論文2本の内容を紹介する。