第204回白眉セミナー : 『占い文書を読み解く』
  • 西田 愛(第11期 人文科学研究所 特定准教授)
  • 2021/10/05 4:30pm
  • オンライン / Zoom(京都大学および白眉センター関係者限定)
  • 日本語

要旨

20世紀の初頭に、敦煌石窟をはじめとする中央アジアの諸遺跡から将来された古チベット語文献の中には、手紙・契約文書・裁判文書・医学文書・占いなどの世俗文書が多数含まれています。仏教文献の大部分が他言語からの翻訳であるのに対して、これらの世俗文書はチベット語本来の著作であり、歴史資料としても言語資料としても極めて高い価値を持っていると言えます。その中で、私が長年研究テーマとしてきた占い文書は、骨・サイコロ・烏の声・銅銭による占いなど、メディア・形式・内容ともに多様であり、当時の敦煌社会のみならず中央アジアの文化交流を知る上でも重要な資料です。
本セミナーでは、まず、研究開始から1世紀以上が経過した古チベット語文献研究について、これまでの研究の流れを概観したいと思います。その上で、「占い文書の研究なんて何の意味があるの?」という疑問におこたえすべく、研究の手法と意義、そこから得られた知見についてご紹介します。また、古文書に残る占いが現在のチベット社会でどのように機能しているのか、自身のフィールド調査の成果を交えて考察したいと思います。

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西田 愛