第2回白眉セミナー : 『昆虫と植物の「軍拡競走」:フィールドワークによる「共進化」過程の解明』
  • 東樹 宏和(京都大学次世代研究者育成センター
  • 2010/04/27 4:00pm
  • 次世代研究者育成センター(iCeMS西館2階 会議室)
  • 日本語

要旨

せめぎ合い、たすけ合い、進化する。生物にとって、他の種、他の個体とは、最も劇的に変動する「環境」である。その移ろいゆく生物的環境の直中で生き残るには、立ち止まらず、「進化のレース」を勝ち抜いていかなければならない。発表者はこれまで、敵対的な種と種の間で起こる「軍拡競走」という過程に着目し、フィールドワークを主体としてその動態を解明してきた。研究対象のツバキシギゾウムシ(Curculiocamelliae)とヤブツバキ(Camelliajaponica)の関係では、ゾウムシが極めて長い口(口吻)でツバキの果実に穴をあけ、中の種子に産卵する。これに対し、ツバキは果皮と呼ばれる分厚い防衛壁をもっており、果皮が厚いほどゾウムシの口吻が種子に届きにくい。一連の室内実験および野外観察から、ツバキとゾウムシが互いに強い「自然選択」を及ぼし合い、ゾウムシの口吻長とツバキ果皮の厚さの間で急速な軍拡競走が起こることが明らかになってきた。本発表では、なぜ軍拡競走が始まるのか、そして、どのようにして終わるのか、また、どのような速度で自然界の生物が進化しているのか、このゾウムシとツバキの系をモデル例として議論したい。よろしくお願いいたします。

関連する研究者

東樹 宏和