3月15日13時に第15期公募情報を公開いたしました。
4月1日13時より応募者登録サイトへの登録が可能です。
Information on the 15th call for applications was opened at 13:00 on 15 March.
Applicants can register on the registration website from 1 April at 13:00.
『 精神病理の発生機序を理解するための行動遺伝学研究 』
人間行動遺伝学は遺伝情報を含有する標本(例えば,双生児)を対象とする応用統計学であり,量的形質の背後に仮定されうる遺伝・環境構造について示唆を与えることの出来る有用な方法論です。今回は,抑うつ傾向および冷淡さ/無感情性の2つの形質に関する双生児研究について報告します。まず前半では,本邦における成人期の双生児標本を対象とした抑うつ傾向に焦点を当てます。この研究において私たちは,表現型および遺伝・環境的影響それぞれの水準に関してそれらの構造について検討を行いました。その結果,抑うつ傾向の一般因子は中程度に遺伝的であり(47%),これは先行研究の結果を追試するものでした。一方で,3つのそれぞれの症状特異的な因子(認知的・情動的・身体的症状)のそれぞれにはほとんど遺伝的な影響はなく,その多くは非共有環境(測定誤差を含みます)によって説明されることが明らかとなりました。次に後半では,英国の双生児標本を用いた冷淡さ/無感情性の研究について紹介します。この研究は,子ども期から青年期まで4時点の縦断データを用いて,冷淡さ/無感情性の遺伝的・環境的な発達軌跡を描き出すことを目的としたものでした。成長モデルを用いた行動遺伝解析の結果,冷淡さ/無感情性の初期値(切片)の分散の多くは遺伝由来であり,かつ変化(傾き)の分散も中程度に遺伝的であることが明らかとなりました。またさらに,これら両者の遺伝的影響の間に相関はなく,まったく異なる機序が仮定されうることが示唆されました。最後に,現在進行中のプロジェクトや今後の研究の方向性も併せてお話ししたいと思います。