第161回白眉セミナー : 『 亀茲(クチャ)国のインド・イラン様式の仏教壁画を読む 』
  • 檜山 智美 特定助教(白眉センター・人文科学研究所)
  • 2019/03/05 4:30pm
  • 白眉センター(学術研究支援棟1階)
  • 英語 (大学院生を含めた学内の研究者が対象のセミナー)

要旨

「仏教美術史を研究するためにドイツへ留学していた」と言うと、大抵は怪訝な顔をされます。仏教美術の研究でなぜヨーロッパへ?それは、私の専門としている亀茲(クチャ)国の仏教壁画が辿った数奇な運命と関係しています。 クチャは現在の中国新疆ウイグル自治区にかつて存在した仏教国の名です。古代よりシルクロード交易路の要衝に位置していたクチャでは、ユーラシアの東西からもたらされる文化的影響を取り込んだ独特な仏教文化が栄えていました。現在もクチャ地域周辺に残る多くの石窟寺院址は、当時の仏教僧院の様子を今に伝えています。石窟寺院のおよそ三分の一は華やかな壁画や彫刻、木造建築部材によって荘厳されており、中でも5~7世紀頃に最盛期を迎えた「インド・イラン様式」の壁画は、クチャの地域性を強く反映しているため、当時の文化的背景を知るための情報の宝庫です。20世紀初頭の帝国主義時代に行われた各国探検隊の活動や第二次世界大戦を経て、現在、クチャの壁画断片は世界中に散在しています。 今回のセミナーでは、クチャの仏教壁画にまつわる歴史的背景と、壁画の「絵画言語」から情報を読み取ってゆく作業を、いくつか具体例を挙げながら紹介します。

関連する研究者

檜山 智美