第16回白眉セミナー : 『生命起源の実験的探究と合成生物学の未来: RNAからみた世界』
- 齊藤 博英(京都大学次世代研究者育成センター)
- 2011/02/01 4:00pm
- 次世代研究者育成センター(iCeMS西館2階 会議室)
- 日本語
要旨
生命が如何にして誕生したのかという問いは、21世紀の科学が答えるべき大きな課題の一つと考えます。地球上で誕生したのか、または宇宙から飛来したのか、、、タイムマシンが無い限り、地球上で進化した生命の誕生の瞬間を見ることはできませんが、その様々な可能性に思いを馳せ、実験的に一つ一つのシナリオを検証することは可能です。
今回の白眉セミナーでは、生命進化の初期過程で重要な役割を果たしたと考えられるRNA(リボ核酸)分子に焦点を当て、ダーウインの進化論のように、分子を試験管内で進化させることができる「試験管内分子進化法」という実験手法を紹介します。それを利用したRNA分子の進化実験を通し、「RNAワールド」の可能性を考えるとともに、「生命とは何か」議論できればと思います。
また近年、生体分子や生命システムを「創る」ことで生命を理解し、新しいテクノロジーを生み出そうとする「シンセティックバイオロジー(合成生物学)」が欧米を中心に注目されています。完全に合成したゲノムからバクテリアを創成できたというニュースが昨年話題になりましたが、生命は創りだせるのでしょうか?また、創りだしていいものなのでしょうか? 私が最近進めている、RNAを利用して生体分子や生命システムを創る研究の紹介とともに、合成生物学の可能性について述べたいと思います。