第159回白眉セミナー : 『 「ヒトが人間になる」ための記憶、その分子メカニズムをショウジョウバエから紐解く 』
- 平野 恭敬 特定准教授(白眉センター・医学研究科)
- 2019/01/15 4:30pm
- 白眉センター(学術研究支援棟1階)
- 英語 (大学院生を含めた学内の研究者が主な対象の公開セミナー)
要旨
私たち生物学者は、霊長目ヒト科の動物として我々を表現するときには「ヒト」と書きます。一方で我々が日常的に使っている「人間」という単語は、動物種の意味を超え、社会生活を営む姿を想像させるでしょう(「人間」という単語が、もともと「人が生きている人と人の関係の世界」を意味していたことに由来するのでしょう)。ヒトが「人間」として存在するために必要不可欠なものは多くありますが、その中でも重要な一つが脳の記憶です。過去の経験を記憶情報として脳内に蓄積することで、必要なときに過去を訪ね、現在に反映させ、私たちはよりよく生きることが可能になります。過去の研究から、「人間」を支える記憶機能が場合分けされ、実験的に研究が進んできました。映画の中だけの話と思っていたような、光をパッと当てて人為的に記憶を操作することも、実験的には今や可能です。そのような現在までの記憶研究に触れつつ、哺乳動物ではなく非常に単純な脳を持つショウジョウバエから何を学ぶことができるのか、紹介したいと思います。「人間」に必要不可欠な、しかしながら一方ではあいまいな記憶を考えることで、領域横断的な議論ができることを願っています。