第150回白眉セミナー : 『知的な問題解決能力の神経メカニズムを探る -試行錯誤によって未知問題を解決するときの前頭前野機能-』
  • 小川 正(次世代研究創成ユニット/白眉センタープログラムマネージャー)
  • 2018-07-03 16:30:00
  • 白眉センター(学術研究支援棟1階)
  • 日本語 (大学院生を含めた学内の研究者が主な対象の公開セミナー)

要旨

 ヒトや高等動物は未知の問題状況に遭遇した場合でも、問題解決を図る能力を持っている。当初は問題解決するための事前知識がないため、試行錯誤を行い、そのアウトカムを評価することによって、問題解決のための新しい知識を見出そうとする(試行錯誤による探索)。しかしながら、一旦、解決するための知識を獲得したら、その知識を利用して試行錯誤することなく問題解決を図る(知識による解決)。このような能力は、脳が有する最も知的な機能の1つであり、前頭前野が重要な役割を果たしていると考えられている。本研究では、新しい問題状況が何度も提供される認知行動課題を霊長類(ニホンザル)に遂行させ、サルが「試行錯誤による探索」と「知識による解決」の2種類の方略を行っているときの前頭前野ニューロン活動を記録・解析した。その結果、前頭前野ニューロンは2つの方略の状態と切り替えタイミングにかかわる情報を表現しているだけでなく、アウトカム(成功、失敗)を生じさせる要因も推論しており、知的な問題解決における上位制御系であることが示唆された。

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