第145回白眉セミナー : 『「口伝の華房」―膨大な教説をどのように編集するか』
- 菊谷竜太(白眉センター/文学研究科 インド・チベット仏教学)
- 2018/04/03 4:30pm
- 白眉センター(学術研究支援棟1階)
- 日本語 (大学院生を含めた学内の研究者が主な対象の公開セミナー)
要旨
アバヤーカラグプタ(Abhayākaragupta,11-12th C.E.)はナーランダ・ヴィクラマシーラ両寺の学頭を務め,インド仏教が終焉する(ヴィクラマシーラ寺破壊,A.D.1193)直前,彼らが数百年にわたって集めたいわば「知の結晶」をインドからヒマラヤ世界へと伝えた主導的人物として語られる。アバヤーカラには曼荼羅儀軌についての「三部作(三環)」と二つの密教聖典への注釈がある。彼はインド仏教における膨大な口伝や教説を整理・統合し,こうした儀礼マニュアルあるいは注釈というかたちへと纏めた。アバヤーカラはさらに自身の著作をも含むおよそ百点以上の文献をサンスクリットからチベット語へと翻訳している。アバヤーカラグプタの膨大な著作のうち,白眉プロジェクトにおいて中心となる研究対象は梵蔵バイリンガル写本が最近発見されたばかりの百科事典的注釈書『アームナーヤマンジャリー(口伝の華房)』Āmnāyamañjarīである。本セミナーでは,密教の注釈文献や儀礼マニュアルが一体どのような構造をもっているのかその全体像を俯瞰したい。次にハンブルグ大学によって進められているインド・チベット語彙集成プロジェクトITLR(Indo-Tibetan Lexical Resource)について報告し,全体を締めくくりたい。