第14回白眉セミナー : 『表情コミュニケーションの心理・神経メカニズム』
- 佐藤 弥(京都大学次世代研究者育成センター)
- 2010/12/21 7:00pm
- 次世代研究者育成センター(iCeMS西館2階 会議室)
- 日本語
要旨
表情を通したコミュニケーションは、ヒトの社会行動の基盤となる不可欠な心のはたらきです。しかし、表情コミュニケーションにおいて、どのような現象(行動的・主観的反応)が起こっているのか、その神経メカニズムはどのようなものか、いまだに明らかではありません。
本セミナーでは、この問題について検討した我々の心理学・神経科学研究の知見をいくつか紹介します。心理学研究の結果、情動を表す表情は、意識前の段階で処理され、優先的に意識的知覚されることが示されました。また、動的な表情に対して、他者に観察可能な表情模倣が自動的に起こることも分かりました。損傷研究・深部脳波研究・脳画像研究の結果、こうした心的活動に、扁桃体や下前頭回が関与していることが明らかとなりました。こうした知見を踏まえて、表情処理の心理・神経メカニズムについて現状の理解をまとめ、今後の研究計画についてお話しします。