第131回白眉セミナー : 『どうして失恋ソングは人気なのか:南アジア古典文学の視点から』
- 置田 清和(京都大学白眉センター)
- 2017/06/20 4:30pm
- 白眉センター(学術研究支援棟1階)
- 英語 (大学院生を含めた学内の研究者が主な対象の公開セミナー)
要旨
我々は日々失恋に囲まれて生きている。片思いが成就しなかった、別れを告げられた、離婚など、様々な原因が挙げられる。これらの喪失の経験は重度の痛みを伴い、時には鬱におちいったりや自殺を考える人もいる。そのように辛い経験であるにも関わらず、 世の中は喪失をテーマとした歌、小説、演劇などであふれている。何故われわれは辛い経験を主題としたこれらの作品を観たり聴いたりして楽しむことができるのだろうか。本発表ではこの問いに対する南アジア古典文学における二種類の見解を紹介したい。
本発表では、まず南アジアにおける古典的美学論の基礎を構築した9世紀カシミール地方の思想家アビナヴァグプタの見解を紹介し、その後に16世紀北インドで活躍した宗教詩人ルーパ・ゴースワーミーの見解を検討する。ルーパはアビナヴァグプタの理論を参照しつつ、 自らの信仰体系に即した独自の宗教的美学論を展開し、発表者の白眉プロジェクトにおける研究の焦点であった。 発表の最後には白眉研究者としての4年間を振り返り、研究・結婚・妻の出産・職探しについて自分なりの反省を試みたい。