第129回白眉セミナー : 『凝縮重電子系の分子理論』
- 倉重 佑輝(京都大学白眉センター)
- 2017/05/23 4:30pm
- 白眉センター(学術研究支援棟1階)
- 日本語(大学院生を含めた学内の研究者が主な対象の公開セミナー)
要旨
理論化学に残る難問題の一つに,従来の一電子理論では扱う事の出来ない 強い電子相関やそれに起因する分子の機能・現象をどのように記述すれば良いかという問題がある. そのような凝縮重電子系では電子波動関数の自由度が指数関数的に増大して行くため, ごく小さな分子の問題を除いて言わば理論の空白地帯となっていた. 化学の凝縮重状態と物性物理の強相関系との数理的類似性に着目することで、 凝縮重電子系に対する強力な数値解法を量子化学の手法と融合させた新規分子電子状態理論を開発し, 100京(10の18乗)次元という膨大な自由度を持つ光合成酸素発生中心の波動関数の計算を世界に先駆けて達成した. このように一電子描像を超えて,金属酵素反応の電子過程を記述することは理論化学者の長年の夢であり, 今後,金属酵素やπ共役分子など幅広い“量子的重ね合わせ”電子系への展開が期待されている.