第12回白眉セミナー : 『ふたりのコーチ物語:日米比較からみたバスケットボール・コーチングの類似点と相違点』
- ミラー アーロン(京都大学次世代研究者育成センター)
- 2010/11/14 7:00pm
- 屋久島
- 日本語
要旨
アメリカ人と日本人を比較して、国民性の違いがしばしば指摘される。その指摘にはかなりの程度、的をえたものがある-アイデアや行動の仕方が異なっており、確かに、両者のあいだには文化的な違いがたくさんある。しかし、ことスポーツの場となると、両国民の行動のなかにしばしばよく似た点が見いだされる。
セミナーでは、二つの大学バスケットボールチームの監督(一人はアメリカチームのアメリカ人女性、もう一人は日本チームの日本人男性と女性)に見られる比較的似通ったコーチング法に焦点を当てる。両監督ともに非常に割り切った現実的な考えをもっている。自分で考え行動することを選手たちに求め、彼らをプロフェッショナルとして扱い、比類のないほどの熱心さと強い意志でコーチングに取り組んでいる。ともにエリートと言ってよく、それぞれの国でよく知られ、本や雑誌、新聞記事などにもよく執筆している。自分がもとそうであったように、ナショナル・チームのメンバーに選抜されるようなエリート選手たちを指導している。
というわけで、両者のコーチングにはそう大きな差異がないものの、コーチや監督を支える制度面の違いは大きい。アメリカ人監督はコーチングという仕事で快適に暮らせるが、日本人監督はコーチングからの収入をほとんど期待できない。日本のバスケットボール界に大きな影響力をもつほどの人物であるにもかかわらず、別の仕事(大学の講師など)で家族を支えなければならないのである。彼のような優れたコーチをもっと育てるために、そして日本のバスケットボールを国際的に高いレベルに上げていくためにも、コーチングという職業を制度化し、彼らの努力に報いるだけのリーゾナブルな給与が支払われる体制を整える必要がある。