第119回白眉セミナー : 『南アジア社会に滲出する「中華」をどう捉えるか?:私たちの現代中国理解を拡張するために』
  • 別所裕介(京都大学白眉センター)
  • 2016/11/01 4:30pm
  • 白眉センター(学術研究支援棟1階)
  • 日本語 (大学院生を含めた学内の研究者が主な対象の公開セミナー)

要旨

私はこれまで、20年以上に渡って中国領内のチベット地域へ通い続けてきました。経済的膨張を続ける現代中国は、国内の不満を抑えるためにも、周辺諸国に絶対的な影響力を行使し、内外ともに「強国」としての認知を確立することを悲願としています。日本が中国との間に抱える「歴史認識」や「領土問題」もその一環にありますが、海を挟んだ隣人である私たちの中国理解は往々にして限定されがちです。「爆買い」や「尖閣」といった局所的な現象にばかりクローズアップすることは、もっと大きなレベルで中国とその隣人世界の間に生じている多彩な変化を総合的に捉えることを難しくしてしまいます。私は、今後の研究期間を通じ、中国‐ネパール国境に位置するチベット人集落(ネパール側)に長期滞在し、ヒマラヤ山脈を越えて押し寄せる「中華的なもの」が、現地の人々にどのように受容/拒絶されるのかについてつぶさに観察することで、現代中国をその「外縁」から捉える研究枠組みを構築したいと考えています。本セミナーでは、①中国でのこれまでの成果、②ヒマラヤ地域開発の現状、③「中国とその隣人世界」研究の展望、の3つの項目について紹介します。また、膨大な国境線を抱える「中国の隣人世界」を包括的に捉えるため、どのような研究体制が望まれるのかについてもお話ししたいと思います。

* 別所さんの発表前に、武内康則さん(5期)がアメリカ留学のお話をしてくださいます。

関連する研究者

別所 裕介