3月15日13時に第15期公募情報を公開いたしました。
4月1日13時より応募者登録サイトへの登録が可能です。
Information on the 15th call for applications was opened at 13:00 on 15 March.
Applicants can register on the registration website from 1 April at 13:00.
『近代中国ムスリムとイスラーム改革主義』
近代に、回民(中国語を話すムスリム)は二つの大きな変化に直面した。第一は、回民が、漢人と和解するために、あるいは友好でさえあるために、一層本格的な努力を要請されるようになったということである。その情況は、まず19世紀後半のムスリム反乱によって生み出された。その反乱は、回民と漢人のあいだの敵意を増強し、少数派であるがゆえに中国の圧倒的多数派たる漢人との直接衝突に無力であった回民の生存を脅かしたのである。ついで20世紀の中国ナショナリズムの高揚は、回民が「中華民族」に参加して漢人と団結することを要求した。回民が直面した第二の変化は、イスラームに関するより新しい思想や書籍が、交通機関や印刷技術の発展にともなって中東や南アジアから中国に輸入されるようになったことである。私の発表では、回民の知識人たちがこれらの二つの変化にどう対処したかに焦点をあてる。
『河瀬友山―近世後期京都における「無料」の価値』
近世出版文化研究が近年大変盛んに行われ、成熟期に至っている。それ自体は歓迎すべき展開であるが、その主な対象が「商業(営利)出版」に注がれてきたことを考えると、かなりのバイアスを孕んでいるとも認めざるを得ない。というのも、近世において、非営利目的で出版され、無料で配布された書物(施印・施本)は、数多くアーカイブスに現存していることから、当時の人々にとって大事なメディアであったことが分かる。にも関わらず、従来の研究はこれらの史料に振り向くことはなかった。
本発表は、この「無料」のメディアの意義を解明すべく、近世後期京都に活躍した、河瀬友山という人物の出版活動に着目する。友山は、水火天神の神主となってまもなく、「孝学所」という社をもうけ、それを拠点に数多くの施印・施本を出版していく。これらの書物の形態・内容・伝播の検討を通して、近世出版文化の隠れた側面を明らかにし、「無料」の視点の意義について考察したい。