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(高棹) 8期の高棹圭介と申します。専門分野は数学、特に平均曲率流方程式と呼ばれる、石鹸膜の動き等を記述する方程式を研究しています。
(中島) 8期の中島秀太です。専門は物理で、冷却原子というものを使った実験をしています。最近は冷却原子系を使って、ブラックホールの情報消失パラドックスと呼ばれる問題について研究を始めようとしています。
(下野) 8期の下野昌宣です。神経科学とネットワーク科学の交錯点を中心に今、研究を進めています。脳神経系っていうのはミクロに見ると細胞がつながり合っていますし、マクロに見ると脳の領域間がインタラクションして、ある種の機能を果たしています。その複雑な絡まり合いを解きほぐす研究をしています。
(川中) 7期の川中宣太です。専門は宇宙物理学の理論的研究で、特に興味を持っているのは、ブラックホールや中性子星や白色矮星といった、いわゆる高密度天体と呼ばれるもので、その天体がどのような振る舞いをするか、ということについて興味を持って、紙と鉛筆とコンピュータを使って研究してます。
(高棹) では、今日のテーマとしては、実験と理論とシミュレーションについて語りたいなと思ってます。何でこういうテーマにしたかというと、僕は実験やシミュレーションをやったことがないんですね。以前微分方程式の本(注1)を読んだときに出てきたのが、①現象から法則・例えば微分方程式を見つけ、②微分方程式に対してその解や性質を解析し、③最後に②で得られたものが、ちゃんと元の現象の性質を表しているかと。だめだったら、「やっぱりここちょっと違うんじゃない?誤差だと思ってたところがそうではなかったり、何か見落としてるのがあるんじゃない?」みたいなものがあって、見直してもう一回①,②,③を回すっていうのが書いてあったんです。僕がやってるのは②で、皆さんの視点からの話が聞きたいなっていうのが、今日のテーマとして僕が提案させてもらった理由です。
(川中) 私がどこかって言われると、例えば現象って、私の研究の場合は宇宙で起こる現象だったりしますし、それを、法則として抽象化するって作業を私はやってるような気がするんですよね。だから、私の研究してるものって、現実に起こる宇宙での現象と完全に切り離してはいけないというのがあるんで、現に起こっていることを説明したい。ないしは、これから起こることを予言したいっていうのがあるんで、①は自分はやってると思うんですね。②もやってる気はするんですね。
(高棹) 数値シミュレーションとかですかね。
(川中) それもありますし、あるいは、もしこの微分方程式とか、そういうのが解析的に解けるものであれば、もう具体的に解いちゃったりするわけですよね。それでもう解も性質もわかるし。だから、もうここは完全に抽象的な世界というか作業ですけども、そういうことも私はやるんですね。で、得られた解を、また具体例に適用するっていう作業ですけども、これもやらなくはないわけですね。だから、そういうことを言うと、高棹さんの場合は数学の方だし、法則からの解を導くみたいなことは、もう抽象的な世界の中での話を主にやってらっしゃって、でも私の場合は、現実の現象にアクセスできるし、アクセスすることが必要とされてる部分もあるので、どれもやってるって言うとすごいですけど、ある方法でどれもやってるっていう感じになると思いますね。