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白眉でのわずか 1 年余りの生活を終え、けいはんな学研都市にある奈良先端科学技術大学院大学に赴任して早くも 8か月が過ぎました。着任当初は空っぽだった実験室も、工事や実験機器の設置などハード面での整備を経て徐々に様になり、また新年度に加わってくれた博士研究員、大学院生、事務スタッフ、技術スタッフの方々の尽力で白眉プロジェクトではじめた研究も再開することができました。
所属大学は研究大学を標榜しているだけあって業務は研究が中心です。実際には自身で手を動かすことは減ってしまいましたが、中長期的にみて研究の推進にも資する仕事ができているという実感を持つことが多く、充実した毎日です。大事な仕事のひとつは大学院生の獲得です。学士課程をもたない大学院大学の宿命で、外部から意欲ある学生に入学してもらうことが研究室の、ひいては大学の浮沈にかかわるからです。この欧米のような状況も今のところ新鮮に感じて楽しんでいます。
白眉プロジェクトでは、それまでに見つけていたプラスチック分解細菌の能力がどのように獲得されたのかを解明することを目指しました。応用重視の昨今において、しかも応用が期待される研究対象に対して、応用を脇に置いた基礎研究です。基礎なくして応用なし、それが最も重要と考えたからです。しかし現職では、少し方向転換して、純粋におもしろい研究を追求しながらも、出口を語れるようになろうと決心しました。白眉研究者のトークはいつも根源的な問いや好奇心に対して真摯に向き合っていて、でも異分野の聴衆をも引き付けるその姿にあこがれたから、というのがいくつかある理由のうちの一つです。つまり、私の研究テーマの場合、社会とのかかわりを意識するのが自然、そこを意識してこそ本当に面白い研究が拓けるのではという心境への変化です。
異動していちばんうれしかったことは、一緒に研究してくれる仲間を得たことです。ひとりひとりのラボメンバーと苦楽を共にし、ひとつひとつの研究テーマと丁寧に向き合って、面白い研究成果を世に問うていきたいと思います。
(よしだ しょうすけ)