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先日、全国高校駅伝の渋滞に巻き込まれました。でも、この渋滞にはイラつきません。というのも、6年前、高校駅伝選手たちに力をもらったからです。白眉採用面接でうまく答えられず、心は砕け、後悔の念でいっぱいになりながら今出川通りにでたとき、ものすごい速さで走りぬける高校駅伝選手を目にしました。後尾に走ってきた選手もものすごい速さです。しんどいはずなのに、懸命に走り続けています。その姿を見て、「こんなことで落ち込んでいたらあかん。みんなしんどいのにも関わらず、前を向いて走ってるんだから、私も頑張らな!」と一気に前向きになったのでした。そして翌日、アメリカに帰る前に空港で買ったのはいつもの小説ではなく、世界情勢と経済の本でした。採用面接で答えられなかった専門分野以外の質問にも自分なりの意見をもって答えられるように、そして何より私自身の興味の幅を拡げることの重要性を強く意識した結果の選択でした。
後悔いっぱいの面接にもかかわらず白眉に採用されて5年間、そこで経験したのは“面白いことは至る所にあり、その面白いことを研究している人が身近にいる”ということです。「なんで?」と思ったことに近くの人がすぐ答えてくれて、しかも期待した以上に面白く話してくれます。いとも簡単に興味の幅が拡がり深みが出てくるのです。これは、白眉だからこそ、意識せずに受けられた恵まれた環境であったと思います。一方、こういう機会は自らが発信源となり積極的に作ることが可能だということ、またそういう機会を望んでいる人達が沢山いることも、この5年間で学んできました。現在も分野交流や情報発信を進めるため、学術会議若手アカデミー社会連携分科会として分野交流を促進できるシンポジュウムの開催を企画したり、研究者自らが教養を深め、分野交流ができる「未来を面白く(仮)」という会で活動を続けたりしています。
白眉での充実した5年間を終え、龍谷大学に今年4月に新設された農学部の教員になりました。この農学部の特徴は、1,2回生が学科を横断する実習を必須でとらなければならないことです。これは、学生にとって様々な分野を学ぶ機会になるのはもちろんですが、教員にとっても学科の隔たりがなくなり、自然に交流が生まれ、お互いの分野を学ぶ良い結果を生んでいると感じています。こう見えて人見知りな私ですが、この学科横断型システムのおかげで、あまり恥ずかしがることなくスタートできました。今後は、龍谷大学農学部に留まらず、他分野、他組織の人と交流する機会を自らが核となって作り拡げることで、自分自身だけでなく、そこにかかわるすべての人の興味の幅も広げていきたいと考えています。
農学部教員でリレーマラソンに出場
(しおじり かおり)