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白眉で1年半お世話になった後、出身校のジョージタウン大学に戻りました。学生から教員に立場が変わり、最初は戸惑うことも多かったのですが、白眉時代に得た研究の素材、研究者としての心構え、そして社交術(?)をここアメリカでも大いに生かして充実した日々を過ごしております。
所属先の「外交学院」は1919年に設立された全米最古の外交官・国際機関職員養成機関で、日本からも外務省や防衛省をはじめとする各省庁から多くの方々が留学されています(緒方貞子元国連難民高等弁務官や河野太郎外務大臣も本校の出身です)。ただ、ワシントンは単に政治の中心地ではなく、芸術と文化にも溢れています。スミソニアン博物館は全て無料。首都という土地柄、世界各国から難民や移民が集まっており、食生活が貧しいと揶揄されるアメリカでは珍しく本格的なエスニック料理を味わうことができます。また、国立公文書館や連邦議会図書館といった世界的な史料館も集積しているため、毎年春休みと夏休みには日本各地から研究者がどっと押し寄せます。街自体は比較的新しいのですが、どことなく京都を思わせる雰囲気があります。
こちらに来て変わったことといえば、やはりトランプ大統領に象徴されるアメリカ政治社会の激動が挙げられます。移民制限、人種差別、経済格差、そして対外政策の迷走といった問題は研究と教育にも深刻な影響を与えており、私の勤務校でも研究費の削減や学生に対する差別的言動が大きな問題となっています。同時に、危機の時こそ改めて歴史を学び直したいという機運も学生の間でかつてないほど高まっています。私が教えるアメリカ外交史の授業でも受講生が昨年に比べて倍増し、皆が真剣に議論を繰り広げています。将来に対する不安が増す中で過去からどのように学ぶべきか、「温故知新」の精神に則って学生や同僚と共に考えていこうと思います。
勤務校です。USJのハリーポッターのお城ではありません!
(ひぐち としひろ)