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今年も中国に行きました。白眉センター在籍時にもほぼ毎年訪れていた、中国西北部、甘粛省の省都蘭州と、そこからバスで2時間半ほどの距離にある、「中国の小メッカ(中国的小麦加)」こと臨夏市へ。今回も臨夏では、毎朝ソウルフードの牛肉面(いわゆる「蘭州ラーメン」)を食べて気合を入れ、中国ムスリムの歴史研究のために、モスクやムスリム聖者廟を訪問しておりました。これがいつものパターンなのです。籍は京大人文研に移りましたが、やっていることはあまり変わっておりません。
いっぽう中国のほうは、結構なペースで変化しているように思います。かつて蘭州の最寄りの中川空港から市内までは、リムジンバスで約1時間、沙漠然とした荒涼たる風景の中を進んだものですが、最近は緑化政策の成果か、沿路の緑が見違えるほど増えました。
鄙びた田舎町であった臨夏市も、「一帯一路」政策の一環で、面目を一新しつつあります。「小メッカ」の歴史がつまったムスリム集住地区、「八坊十三巷」が、今まさに観光地として整備されている最中で、その変貌ぶりに驚きを禁じ得ませんでした。趣のある古い街並みが消えていくことに哀惜を覚えながらも、愛する臨夏が今後どう発展するのか、少し楽しみでもあります。
いわゆる「ガラケー」型の携帯電話が絶滅していることもショックでした。日本ではガラケー派の私も、今回中国で「智能」(スマホ)デビューを果たさざるを得ませんでした。ぎこちない操作を披露して中国ムスリムの友人から「思想落後」のレッテルを貼られながらも、モスクの住持(アホン)や宗教学生(マンラー)と「微信」アプリでチャットしました。便利になったものです。
その他様々な変化の中には、憂慮すべき社会問題もありますが、それも含めて、今後も中国ムスリムの歴史を追うかたわら、現代の彼らを取り巻く状況の推移を観察できたらと思います。
ところで、白眉時代には、中国で名刺を渡すと、時々「白眉」の意味を聞かれることがありました。その都度、「三国志」の馬良が~と説明したものです。このやり取りがなくなってしまったことは少し寂しいですが、私自身も変化を受け入れて、手探りながら前進しようと思います。
臨夏市に最近できた観光スポット「八坊民族館にて」
(なかにし たつや)